第三編 情報・資料

内装施工時のシックハウス対策・マニュアル

このマニュアルは、内装仕上げ工事の施工者が、居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置を定めた法令を守るとともに、法令に定めのない材料等を用いる場合にも、工事に伴い居住者に室内空気質の汚染による健康被害が起ることの無いよう、施工者がなすべきことを明記し、この方法を実施することで、お客様に健康で、快適な居住空間をお届けすることを目的としたものである。
 
第1章 契約時及び事前の準備等
  1.施工者の基本的姿勢
    内装仕上げ工事にあたっては、日本建築学会制定の「清浄空気・建築憲章」(2002年5月15日)並びに日本建築仕上学会が行った「環境宣言」(2002年3月)の主旨に則り、自らの工事でシックハウス問題は決して起こさない。という強い意志をもって万事を処することとする。
  2.シックハウス対策に関する法令等の認識
    1. 内装施工者が認識していなければならないシックハウス対策に関する法令等は次のとおりである。
厚生労働省が設定した化学物質の室内濃度の指針値
建築基準法第28条の2居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置、及びこれに基づく施行令、告示等
文部科学省が定める学校環境衛生の基準
建築物における衛生的環境の確保に関する法律
住宅の品質確保の促進等に関する法律
2. 建築基準法施行令第20条の5化学物質の発散に対する衛生上の措置に関する技術的基準の要旨を次に掲げる。
 

ホルムアルデヒド発散建築材料の使用制限

告示で定める建材
ホルムアルデヒド発散速度
上位規格
0.005㎎/㎡h以下のもの
第三種発散建材0.005㎏/㎡hを超え0.02㎎/㎡h以下の
もの
第二種発散建材
0.02㎎/㎡hを超え0.12㎎/㎡h以下の
もの
 第一種発散建材0.12㎎/㎡hを超えるもの
JIS、JAS規格の放散の等級 F☆☆☆☆ F☆☆☆ F☆☆  
大臣認定を受けた建材 第20条の5
第4項の認定
 第20条の5
第3項の認定
第20条の5
第2項の認定
 
内装仕上げの制限 制限なし 仕上げ面積に乗じる数値(当該床面積を超えないこと) 仕上げ面積に乗じる数値(当該床面積を超えないこと) 使用禁止
居室の種類  換気回数
(1時間当り)
住宅の
居室等
0.7回以上 制限なし 0.20
(参考5倍以内)
1.2
(参考0.8倍以内)
使用禁止
その他(0.5以上0.7回まで) 制限なし 0.50
(参考2倍以内)
 2.8
(参考0.35倍内)
使用禁止
住宅等の居室以外の居室 0.7回以上 制限なし 0.15
(参考6.6倍以内)
0.88
(参考1.1倍以内)
使用禁止
0.5以上0.7回未満 制限なし 0.25
(参考4倍以内)
1.4
(参考0.7倍以内)
使用禁止
その他(0.3以上0.5回未満) 制限なし 0.50
(参考2倍以内)
3.0
(参考0.3倍以内)
使用禁止
 
  3.居室に設けられた制限の確認
    施工に当っては、当該居室に設けられたホルムアルデヒド発散建材の制限を確認し、法令の定めに適合する材料・工法を選択する。この際、当該居室の換気回数が施主又は監理者より正確に指示されないときは、換気回数が最も少ない場合に設けられた基準に適合するようにする。
  4.居住者の健康状態の把握
    工事の受注に際しては、居住者の家族構成、暮らし方、健康状態等を伺い、通常の資材、通常の施工方法で支障ないことを判断する。問題がある場合は、施主及び居住者との相談の上で資材・工法を選択することとする。
  5.下地、基礎、床下の仕様の確認
    内装工事で直接対象となる下地、基礎、床下等については、次の事項を確認し、問題がある場合は、施主及び居住者と相談して対策をとる。

下地材についてはホルムアルデヒド発散の等級を確認する。
基礎・床下の仕様の確認。木材保存材(現場施工用)、防蟻剤等
前記各号は、施工後5年以上経過したものについては、建築基準法では発散建材から除かれていることを報告する。ただし、ホルムアルデヒドについては、法規制の対象にならないものでも水分の影響を受けると加水分解により発散する場合もあるので、その情報はお伝えしておくのがよい。
  6.資材・副資材・工法の選択と承認
    1.仕上げに用いる資材類は、施主及び居住者の要求に基づいて選択されるが、その選択に際しては、施工者側は、各種資材、副資材類について、ホルムアルデヒド発散建材か否か、発散建材ならばJIS JAS規格、国土交通大臣の認定、業界団体等のホルムアルデヒド発散区分表示等の確認を行い、その資料を施主及び居住者に提出するものとする。
    2.施主及び居住者との打合わせで候補に挙げられた資材、副資材、工法を次のような方法で、居儲に示し凋題のないこと雄拗るとともに・その翻を得て記録に残すこととする。
候補の資材類の現物(壁紙の場合は20×30cm角以上のものとする。)を提出し、居住者に手にとってもらうようにする。できれば数日間お手元に置いて頂き、確かめて頂く。
用いる接着剤については、容器の蓋等をあけ確認して頂く。
その他の副資材類についても、現物の提出、必要データの提出を行い作業中に問題が感じられるものについては、できるだけ詳しく説明を行うこととする。
承認を得た記録については、使用材料の一覧表、若しくは、施工計画書を提出する場合は、その書面への承認印をもって代えることができる。
  7.工期の設定
    工期の設定は、次のことを考慮して行う。
溶剤等の揮発性化合物を用いて施工するものは、十分な乾燥、換気時間がとれて、他の仕上げに化合物が移行するなどの支障が生じないよう余裕をみた段取りをする。
下地処理後は十分な乾燥時間をとる。
使用建材も事前の養生が効果的なものがあるのでその時間もみるようにする。
丁寧なシックハウス対策には、工期に余裕のあることが大切なので、この点につき施主の了解を得るようにする。
  8.標準契約書式の利用
    リフォーム工事の契約に際しては、住宅リフォーム推進協議会が制定した「住宅リフォーム工事標準契約書式(小規模工事用)」を利用する、又は、この方式を取入れた契約の方法が有効であるのでできるだけ参考にする。
  第2章 工事実施上の問題
 
  9.施工計画書、材料リストの提出
    内装材料、工法が決定し、施工にかかるに際しては、通常提出する施工計画書等の他に、別に示す材料リスト(略)を提出し、施主の承認を受けるものとする。
  10.ホルムアルデヒド等の移行防止の措置
    施工に用いる内装材料等に、他の資材等からホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質が移行することのないよう次のような点に注意する。
材料の保管、運搬の際に移行を受けることがないよう注意する。必要な場合は、材料をプラスチックの袋又は容器に入れて移行を防ぐなどの措置を講じる。
同じ現場で他の工事の施工が並行して行われる場合は、建設業者、他の工事の業者等と打ち合わせをしっかりと行い、内装材料や仕上げ後に他からホルムアルデヒド等の移行が起らないよう措置を講じる。
  11.近隣に及ぼす被害の防止
    リフォーム工事の施工に当っては、近隣に被害や迷惑を及ぼすことのないよう十分な対策を講じる。
とくに、次のような問題が起らないよう注意する。
外装の塗装等で生じる揮発性化学物質により近隣の居住者に迷惑を及ぼすこと。
工事に使用する建材の臭い等が近隣の人々に不快感を与えること。
工事に伴う、音、振動、粉塵等が近隣の人々に迷惑を及ぼすこと。
  12.内装仕上げの各工事の留意点
    内装仕上げの各工事は、施工仕様に基づき、それぞれ所定の工法及び標準施工法等にしたがって行うが、その工事については、次の点を注意して行う。
溶剤系の接着剤・塗布剤を用いる工事は、施工後換気により揮発性暫質がなくなるまでの時間を取り、他の仕上げに揮発性物質が移行しないように注意する。
下地調整の施工後は、下地処理剤が十分に乾燥するまでの放置時間をとり、室内の換気にも心掛ける。
現場の他の部分で溶剤系の物質を使う工事が行われているような場合は、溶剤の汚れが付いた作業服や、道具、機器類が当該内装工事の現場に持ち込まれないように注意する。
施工時は常に換気に注意する。ただし、壁装工事では、接着が完了する迄の養生時間をとった後に換気を行う。張替え工事の場合は、とくに、施主又は居住者に、壁紙が接着し終わる迄は工事中であることを良くご理解頂くことが大切である。
  13.工程写真の撮影
    工事中の揮発性化学物質放散に関係ある作業については、次のことを考慮して工程写真を撮影し保管する。報告書を提出する際はできるだけ当該写真を添えるようにする。
下地の放散等級区分の表示と当該現場の状態
使用する建材の放散等級を表わす表示と当該建材を用いて施工する状態
施工完了の状態
  14.喫煙の禁止
    内装仕上げの現場では喫煙をしない。
  15.簡易測定法の利用
    施主又は居住者との打ち合わせによっては、ホルムアルデヒドの簡易測定法を採用し、施工前、施工後の室内濃度を報告するのは有効な方法である。
  第3章 施工完了後の措置
 
  16.使用材料と工法の報告書の一提出
    仕上げに用いた各種の材料についてはぐ施主に、材料名、素材、ホルムアルデヒド発散の等級・区分、JIS JAS等の表示、国土交通大臣の認定、建材関係団体等の表示等を記載し、また、施工方法を記した報告書を提出する。
報告書の参考例は別に示す(略)。
  17.住まい方のしおりの贈呈
    施工引き渡し時には、施主又は居住者に室内空気質に配慮した暮らし方の情報を説明した「住まい方のしおり」を贈呈し、ホルムアルデヒド等を発散するものが建材だけでなく、様々なものがあるので、健康を侵されないよう注意して生活されるようお薦めする。とくに、換気が大切であることをご理解頂くようにする。
住まい方のしおりの例は別に示す(略)。
 
 

壁装施工団体協議会(平成15年4月10日・平成16年10月6日一部訂正)