第1章   カーペットの歴史
1. 1 カーペットの起源
 遠く原始未開の世界では、人々は洞穴(ほらあな)に住んで、野や山で狩猟をして生活をし、その日その日を送っていたが、こんな旧石器時代から、すでに敷物は使われていたようである。
 北方の人は、冬の寒さと地面からの湿気を防ぐために、獣の皮を敷物とし、南方の人は、草や木の茎や皮を編んでつくった敷物で暑さをしのいでいたということである。
 このように、少しでも住み良い環境を求めるためにする工夫は、人間の本能であり、初歩的な知恵であった。
 それが牧畜農耕の時代になると、家畜の羊の毛を梳いて平らにして、これを圧縮させ、フェルト(felt)の敷物にする技術が生まれ、それから間もなく、羊毛を紡いで糸にして、織物では最も簡単な平織の敷物ができた。やがて、縞模様や綴織でつくられた豪華な敷物が、紀元前15世紀頃には、エジプトやバビロンの王宮の床を飾るようになったのである。
 しかし、このような薄いフラット(平面)な織物は、暖かさも、踏み心地も本物の毛皮の良さには比べものにならないため、それらを何とか毛皮に似たものにしようと苦心を重ねてつくられたのが緞通(だんつう)である。
 緞通がいつ頃からできたかは明らかではないが、1949年に、ロシアの考古学者がアルタイのスキタイ王族の古墳からフェルトカーペットとともに発掘した緞通は、少なくとも紀元前5世紀より前のもので、質も模様も緻密で、当時の製作技術がいかに高度であったかが立証された。その後、いろいろな考証によって、イランあたりでつくられたものであろうと想像されている。
 緞通は、中央アジアを中心に、旅人や遊牧民によって世界各地に製法が広がり、インドや中国、ペルシャ等で、多くの財貨に匹敵するほどの値打ちがあったということである。わが国へは元禄年間に伝えられた。