第 2 章   カーペット
2. 1 カーペットの分類
 今日のカーペットには様々な種類がある。
 これは様々な製造方法や用途に応じた二次加工方法に、多種のパイルの表現(テクスチャー)が合わさり、加えてパイルに使用している多種の繊維からなるためである。このように多種の要因が複合されるカーペットを分類する場合、それぞれの項目ごとに整理すれば、理解することが容易にできる。
 尚、カーペットはよく以下のように分類される。
1 製造方法による分類
2 テクスチャー(パイルの状態)による分類
3 使われているパイルの繊維素材による分類
  ここでは製造方法を中心に、できるだけ最近のカーペットに焦点を合わせ、材料の特性や製造方法の特徴をあげ、適材を適所に施工するための実用性を重点とした分類にした。
2. 1. 1 製造方法によるカーペットの分類
         
表2-1
 織カーペット  手織カーペット  緞通
 機械織カーペット  ウィルトンカーペット
 アキスミンスターカーペット
 ダブルフェースカーペット
 刺繍カーペット  フックドラグ
 タフテッドカーペット
 接着カーペット  フロックカーペット
 コードカーペット
 不織布カーペット  ニードルパンチカーペット
 タイルカーペット
(1) 緞通(だんつう:毯子・地毯とも書く。 Knotted Carpet)
 基布になる経糸にパイルをひとつひとつ手で結びながら切断して毛房をつくりながら織っていく手織り(手結び)カーペットである。ペルシャ、トルコ、中国産のものが世界的に有名で、日本では鍋島・赤穂・堺・山形緞通等が知られている。
 結び方には、ペルシャ結び(図2-1)とトルコ結び(図2-2)がある。緞通は中国語の毯子(Ton-tzu)から出たともいわれ、明治、大正時代は段通と書かれていた。
 緞通は単位面積あたりのパイルの結び目の数が多い程手間がかかり、品質も優れたものとなり、パイルの一方を引っ張っても結びが堅くなるだけで抜けない組織になっている。
 製造技術に熟練を要すること、量産できないこと、耐久性が大変優れていること、色、柄が大変繊細であることなどで、現在では美術工芸品的意味合いをもったカーペ.ットといえる。

(2) ウィルトンカーペット (Wilton Carpet)
 18世紀中頃、英国のウィルトンという町で生まれ、その後、ジャカードという人が、自動的に柄を織り出す装置を考案して広く普及した。
 表面のパイル糸と、裏面の地経糸、覆経糸、緯糸の4種の糸で織り上げている。
 緯糸2本毎にパイルをつくることを「二越」、緯糸を3本毎にパイルをつくることを「三越」と呼ぶ。パイルの色数は、5色まで使用可能であり、また、ジャカード装置を用いてパイル糸を選択して引き上げたり、またがせたりして、テクスチャーに変化をつけることができる。
 これらは変わり織と呼ばれている。金華山織、カランバン織等がある。
 パイルの形状は、ループとカットの両方があり、それらを組み合わせることもできる。


(3) アキスミンスターカーペット (Axminster Carpet)
 英国のデボンシャーのアキスミンスターという地でつくり始めたのでこの名がある。
 カーペットの代表的な組織のひとつで、オリエンタルラッグの手結びに似た方法により、パイルは機械的に織り込まれる。製造方法によって次のようなものがある。
1 グリッパー・アキスミンスターカーペット
 ジャカード装置に紋紙を用い、パイル糸の入ったキャリーをそれぞれ定められた位置に引き上げ、必要なパイル糸のみ横一列に並べ、グリッパーでパイル長に指定した長さだけ摘み出して切り揃え、織口に運んで織り込む。使用できる色数は12色まで可能である。
 最近では、紋紙を使わずに、フロッピーディスクに記憶された柄を、直接織り込む方法も考案され、柄リピート(繰り返し)寸法を大きく更新している。
2 スプール・アキスミンスターカーペット
 パイル糸を意匠図にしたがって、横一段毎にスプールに整経し、先端を杼口(緯糸を通す道具)に運んで緯糸を入れ、指定した長さに引き上げて切断して織り上げる。
 色数は制限なく使えるのが特徴である。

 

(4) ダブルフェース・ウィルトンカーペット (Face to Face Carpet)
 1950年代に入って、2重カーペット織機が輸入され、2枚のカーペットを同時につくるフェース・ツー・フェースカーペットが販売された。
 これは、表、裏、2重の地組織にパイル糸を織り込んで、表、裏の中央を円形のナイフで切断して(図2-8)、2枚のカーペットを同時に織ることができることから、この名がついた。
 このカーペットの両耳は、オーバーロックするか、裏面から接着剤を塗布して糸のほつれを防止する。ウィルトン織よりもパイル密度の高いものができて、はっきりした柄を出せるのが特徴である。

 

 

(5) フックドラッグ (Hooked Rug )
 基布に描かれたデザインを1本針のフックガンというピストル状の機械で、パイル糸を植え付ける。
 原理は、タフテッドカーペットの製法と同じだが、パイルの長いもの、短いもの、密なもの、粗いもの、カットパイルやループパイル、ハイ&ローパイル、色数等を自由につくることができる。

 

(6) タフテッドカーペット (Tufted Carpet)
 ウィルトンカーペットやアキスミンスターカーペットは、基布とパイルを同時に織り上げるが、タフテッドカーペットは、既成の基布(図2-10の一次基布)にニードルと呼ばれる数千本の針で、パイル糸を植え付ける。
 タフテッドカーペットは、ウィルトンカーペットやアキスミンスターカーペットなどの織カーペットの数十倍以上の生産能力があり、カーペットの主流となっている。最近、機械の開発と繊維素材の改良とが著しく進歩して、複雑な柄物もできるようになった。
 パイルの形状は、ループパイルとカットパイル以外に、それらを組み合わせたものや、ハイ&ローを付けたものなど種々にわたっている。
 パイルを植え付けた基布は、パイル糸の脱落防止、寸法の安定性、クッション性、硬さおよび重さの保持等のため、裏面にバッキングをしている。
 バッキングの種類によって求められる機能性、施工方法が異なるので注意する。

ホワイトバッキング 裏面にバッキング材(主にSBRが使用される)を塗布したもの。
ジュートバッキング 二次基布に麻布(黄麻〉を張り付けたもの。
フォームバッキング クッション性を良くするため、裏面にSBR(スチレンブタジエンラバー
 = 合成ゴム)、PVC(ポリビニルクロライド = 塩化ビニル)、PU
 (ポリウレタン)を加工し、発泡させたもの。
特殊バッキング 用途目的に合ったバッキング加工、ホットメルト、塩ビコーティン
グ等がある。(主に車輌用、人工芝生用等)
(7) フロックカーペット  (Flocking Carpet)
 電着カーペットともいう。接着剤を塗布した基布に短い繊維(フロック、毛羽)を静電気の高電圧の吸引力で固着させたカーペット。
(8) コードカーペット (Cord Carpet)
 パイルを基布に接着して、固定したものである。 パイルが畝状に並んでいるのが特徴である。
(9) ニードルパンチカーペット (Needle Punching Carpet)
 フェルト状の不織カーペットである。アメリカで開発された。1963年頃(アメリカ)、1968年頃(日本)から生産されている。
 ふわふわの繊維のウェブ(Web:薄く広く伸ばした膜状)をニードル(針)で突き立て、基布にからませてフェルト状にしたものである。
 タフテッドカーペットや織カーペットは糸状にした繊維を使うが、ニードルパンチカーペットは、短繊維を直接フェルト状にする違いがある。
2. 1. 2 テクスチャーからのカーペットの分類
  カーペットのパイルの形状をテクスチャーという。 同じ製法のカーペットでも、テクスチャーが異なると、見た感じも感触も大きく変わり、1色使いのカーペットでもテクスチャーの変化によって、デザイン効果を出すことができる。
  また、耐久性など性能面でも差が出るので、使用目的に応じてテクスチャーを選ばなければならない。
 

1

カットパイル
(1) ブラッシュ
最も一般的なタイプで、パイル長は通常5〜10mm程度まで、いろいろある。
カーペットの表面が均一になるようシャーリング(勢毛)仕上げをしている。

(2) ハードツイスト
パイル糸の1本1本に強い撚りがかけられているので、弾力性、耐久性に優れている。パイルはブラッシュよりも長く、一見シャギータッチのムードと個性がある。
(3) シヤギー
パイル長が30mm前後で豊かな風合や肌触りの良さが特徴である。シャギーは一般的な敷き詰め施工もするが、他のカーペットの上にピース敷き(カーペット・オン・カーペット:Carpet on Carpet)をする場合がある。
(4) ベロア
表面をスムーズで柔らかくベルベットタッチ風に仕上げたカットパイルカーペットである。
比較的高密度に打ち込まれており、パイル長は5〜7mm程度が多い。
(5) サキソニー
パイル糸をヒートセット加工し、パイル先端をペンシルポイント状とし、直立したパイル長10〜20mm程度のレベルカットタイプをいう。

2

ループパイル
(1) レベルループ
パイルがループ(わな)状で一定の高さに揃っているカーペットのことである。
表面が適度に硬く滑らかなので歩きやすく、耐摩耗性に優れ、汚れにくく掃除も容易なことから、歩行量の多いところに適している。

 

(2) マルチレベルループ
ループ状のパイルに高低をつけて、パイルの表面に変化をつけたカーペットのことである。
規則的に高低をつけて、はっきりした柄をつくり出したものと、不規則に高低をつけたものとがある。

3

ハイ&ローパイル
パイルの長さに高低をつけたり、パイルの形状をカットとループにすることなどによって、デザインを強調させたり、色調を部分的に変化させる効果があり、種々の柄模様が表現できる。
             
      (1) ハイ&ローループ  
        高いループパイルと低いループパイルを組み合わせて柄模様を構成したもの。  
           
      (2) チップシェア  
        ハイ&ローループの高いパイルの先端をシャーリングしたもの。  
       

 
           
      (3) レベルカット&ループ  
        同じ高さのループパイルとカットパイルが混在するもの。  
           
      (4) ハイカット&ローループ  
        ハイ&ローループの高い方のパイルをカットしたもの。  
           
      (5) マルチループ&カット  
        ハイカット、ミドルループ、ローループの3段の高さのパイルを組み合わせたもの。  

2. 1. 3  カーペットパイルに使用される繊維の種類
(1) 繊維の種類
 カーペットのパイル素材として使われる繊維には、下表のようなものがある。そのうち、主として使われるのは、天然繊維ではウール、化学繊維ではアクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンである。
表2-2

パイルに使う繊維

天然繊維

 ウール
 綿

化学繊維

 再生繊維(セルロース系繊維)  レーヨン
 合成繊維  アクリル
 ポリエステル
 ポリプロピレン
 ナイロン
◎再生繊維(セルロース系繊維)

 

木材パルプ等に含まれている繊維素(セルロース)を薬品で溶かして再生したもの。
◎合成繊維

 

石油等を原料に化学的に合成した物質を使ってつくった繊維。
 繊維の性質は、カーペット性能に大きく影響するので、それぞれの特徴を踏まえた上、カーペットの使用目的に、または要求される機能に応じた最適なものを選ばなければならない。
 主に使われる繊維の性質は以下のとおりである。
 
1 ウール 
   ウールの特徴は、繊維の表面に鱗片(スケール)があることである。このため、繊維のからみをたすけ、弾力性、かさ高性等の特性を持つ。
 また、保温性、吸湿性等の特性を持つ。耐摩耗性ではナイロンに比べると劣るが、ウール独特の風合いを持ち高級感がある。
 一般的に、カーペットに使われるウールは、衣料と違って太い繊維が使われる。
    
2 アクリル 
   日本において、カーペット素材として最も広範に使われている合成繊維の一つである。
 アクリルはセーター等に非常に多く使われていることからわかるように、柔らかで、ふっくらした感触が特徴で、合成繊維の中でウールに最も近い風合をもつ。
    
3 ナイロン 
   ナイロンには、いろいろな種類があるが、カーペットに使用されるものでは、6タイプと66タイプがある。近年まで6タイプが中心だったが、今日では66タイプが多くなっている。特に捲縮(かさ高)加工を施したBCF(Bullked Continuous Filamentの頭文字:かさ高加工長繊維)ナイロンが使われている。
 ナイロンの特性は、そのすぐれた強度、耐摩耗性にあり、耐久性の要求されるコントラクトカーペットには最適である。また、染色性にもすぐれ、後染方式には最適の素材である。近年タイルカーペットを中心に退色堅牢度の高い原着ナイロンも増えている。
    
4 ポリエステル 
   ポリエステルは一般にカーペットとしてはステープルが使われる。
 特性は弾力性にすぐれ、その特性を生かした商品が多い。
    
5 ポリプロピレン 
   ポリプロピレンは、一般に低価格帯のものに使用されることが多い。ステープル、フィラメントどちらも用いら、フィラメントはタフテッドカーペットやタイルカーペットに、ステープルは主にニードルパンチカーペットに使われている。また、ポリプロピレンチップをテープ状に延伸し、スプリット化して人工芝ヤーンとしても広く使われている。
(2) 各繊維のカーペットとしての特徴
繊維別に、カーペットとしての特徴を表にすると次のようになる。
表2-3 各種繊維素材のカーペットとしての特徴
素材
(形態)
ウール
(スパン)
アクリル
(スパン)
ナイロン ポリエステル ポリプロピレン
(フィラメント)
(長繊維かさ高加工糸) (スパン) (フィラメント) (スパン)
磨耗
(すりきれ)
へたり
(弾性回復)
もつれ
(ファズ)
抜け毛
吸湿性
防汚性

 

 

特別に処理を施すことにより、防汚性は向上する。
難燃性

 

(難燃アクリル:◎)

合成繊維は炎に溶けるが、燃え広がりにくい特徴を持つ。
帯電防止性
(低湿度時悪い)
一般に帯電防止処理が施されており、不都合は無い。
防虫性・
防カビ性
合成繊維は、虫やカビに侵されにくい。
記号説明 ◎ 優秀 ○ 良好 △ やや劣る ▲ 劣る
(注) 上記は5者間の相対的な比較であって、絶対評価を示すものではない。
スパン(糸) --- 短繊維(ステープル:10〜15cmの繊維長)を紡績して糸にしたもの。
長繊維かさ高加工糸 --- 遊び毛や毛玉ができにくく、耐久性に優れるカーペット用のナイロン。
フィラアメント糸 --- 連続した長い繊維(長繊維)。
         
    (3) パイル糸について  
     

1

糸の種類  
        パイル糸は、パイル用繊維をパイル糸にする加工方法により、次の2つに大別される。  
     
 
フィラメント糸 ----- 絹やナイロンのように細長く連続した長繊維を束ねてパイル糸にしたもの。
紡績糸(スパン糸) ----- 綿状の短い繊維(ステープル)を紡績(*注1)してパイル糸にしたもの。ウールは天然繊維であるため、短繊維である。合成繊維は、すべてフィラメントであるが、カットして短繊維としても使う。
(注1) 紡績とは、多数のステープル(短繊維)を集めて、これを平行状態に配列し、撚りをかけながら一定の長さの糸にする工程。
紡績の工程の多い、少ないによって、紡績も3つのタイプに分けられる。
工程が多いほど不純物も少なくきれいに引き揃えられている。工程の多い順から、梳毛紡績、セミ梳毛紡績、紡毛紡績となっている。
それらによって作られる糸を、それぞれ、梳毛糸、セミ梳毛糸、紡毛糸という。梳毛糸は毛羽が少なく滑らかな手触りで、主に服地に用いられ、カーペット用はセミ梳毛糸とボリューム感のある紡毛糸が使われる。
 
表2-4    
 
  フィラメント糸 紡績糸
ウール
ナイロン
アクリル
ポリエステル
ポリプロピレン
( ○ = 主流 △ = 少しある  ー = なし )
           
      2 糸の太さ  
        パイル糸の大きさを表すのに、カーペットでは、次の2つの単位を使う。  
番手 --- 紡績糸の太さを表す単位をいう。
恒重式と呼ばれ、1gの長さをいう。
(例) 1gで 1mならば 1番手
1gで 2mならば 2番手
デシテックス --- フィラメント糸の太さを表す単位をいう。
恒長式と呼ばれ、10,000m当たりのパイル繊維の質量をいう。
(例) 10,000mで 1,000gならば  1,000デシテックス
10,000mで 2,000gならば  2,000デシテックス
           
      3 糸の撚り方について  
パイル糸の多くは撚りがかけられている。 1本の糸に撚りをかけたものを単糸という。
さらに単糸を2本合わせ、撚りをかけて1本の糸にしたものを双糸という。3本撚り合わせたものを三子という。
 これら撚りをかける目的は
1. 糸に強度を与える(引っ張り、耐摩耗性、弾力性)。
2. 撚り合わせて、カーペットに適した太さの糸にする。
3. 糸に丸みを与える(感触性、歩行性)。
4. カーペットに特殊な風合を与える(サキソニー、フリーズ、ピンポイント等)

撚方向
タオルを絞るのと同じように、撚りの方向にも二方向あり、S撚とZ撚という。

無撚糸
最近、ナイロン、フィラメントにおいて、数本を合わせる場合、撚りをかけないでエアーで交絡させる方法が多くなっている。
この方法によるパイル糸をヘザー糸とか、コーミングル糸とかインターミングル糸といい、紡績糸のミックス感を表現するために行われる。