第10章 カーペットの機能性とメンテナンス  
            
    10.1 カーペットに付与される機能性  
            
     10.1.1 耐久性  
      
  カーペットは床である以上、まず、耐久性が必要とされる。土足のまま歩かれるコントラクト分野では、特に重要な性能となる。
 耐久性とは、耐摩耗性と弾性回復率とを指すが、耐摩耗性とは、歩行等による繊維の表面のすり切れに対して強いかどうか、弾性回復率とは、歩行とか家具によってつぶれたパイルがどれだけ回復するかをいう。
 これらの耐久性は、以下の要素に関連している。
素材 ナイロン > 他繊維
繊維規格 フィラメント糸 > スパン糸
パイル形態 ループ > カット
パイル密度 >
 
            
     10.1.2 防汚性    
           
      防汚性は、メンテナンスにより大きく変わり、正しいメンテナンスが行われれば、経済性、耐久性にも効果が高まる。
 カーペットを長期間美しく保つためには、できるだけ汚さない対策や定期的なメンテナンスが大切だが、カーペットそのものにもある程度汚れに対する機能(防汚性)を付与する方法がとられている。
 防汚の方法には、以下の方法が用いられている。
 
           
       
   

(1)

防汚糸の使用(SH)  
           
        繊維1本1本の断面が、図のように中空になっている糸を防汚糸という。
繊維の断面が中空になっていることで光を反射し、表面に付着した汚れを立ちにくくする効果が得られる。
コントラクト分野が主な用途であるナイロンに、このタイプがあり、汚れを隠すという意味で、SH(ソイルハイド)といわれている。
 
           
     

 
           
    (2) 防汚加工(SG)  
           
        フッ素樹脂を繊維1本1本の表面に被膜として覆ったり、カーペットの表面に塗布して、水性汚れや油性汚れをはじくようにして、汚れを付きにくくするという意味で、SG(ソイルガード)加工ともいう。  
           
    (3) ソイルリリース(SR)  
           
        パイル糸に吸着させた親水性樹脂により、汚れが付いても落ちやすいという意味で、SR(ソイルリリース)加工という。  
           
   

(4)

防シミ加工  
           
        ナイロンで、汚れがシミにならないようにする方法である。食物や飲物の汚れに対して、長時間放置後も除去できるようにしてある。  
           
           
    10.1.3 制電性  
           
      新しく敷いたカーペットの上を歩いて、金属製のドアーの把手を握ったり、エレベーター昇降ボタンの金属板に手を触れたりすると、指先にピリッと不快なショックを感じることがある。これは、カーペットの上を歩いている間に、靴やスリッパの底とカーペットのパイル面との摩擦によって、体に蓄積された静電気が原因である。
 この発生した静電気を直ちに中和、もしくは放電させ、帯電量を減らす性能を制電性という。

 カーペットの制電には、以下の手段が単独または併用して用いられる。
 
           
      1 金属繊維(メタリックファイバー)をパイル素材に混入する。  
           
      2 炭素繊維(カーボンブラック)をパイル素材に混入する。  
           
      3 パッキング材にカーボンブラック(非常に微細な炭素の粉末)を練り込む。  
           
      4 静電防止剤を散布する………等がある。  
           
         なお、静電気発生後の放電による不快な刺激(電撃ショック)を受けないためにも、JIS規格(L-1904)では、温度23(±1)℃・湿度25(±2)%における帯電量を3KV以下としている。
また、コンピューター、電子機器の障害防止には1KV以下に抑える必要があるといわれている。
 
           
           
    10.1.4 防炎性  
           
      昭和54年7月より、消防法の防炎対象物品にカーペットが加えられた。
その内容は、「不特定多数の人が利用する建築物、31m以上の高層建築物等の場合は、消防法に定められた一定の防炎性能基準に合格したカーペット(商品ごと、防炎協会が防炎ラベルを交付)が使用されなければならない。」というものである。
 カーペットに使用される繊維素材の多くは可燃性であるため、種々の対策がとられるようになった。
 一般には、以下の方法を単独でまたは組み合わせて、防炎性能基準に合格するように対策している。
 
           
      1 繊維の段階でパイル糸に防炎成分を加える。  
           
      2 カーペットのパッキングに使用するラテックスを防炎化する。  
           
      3 カーペットの密度を上げ、空気含有率を小さくする。  
           
           
   

防炎性能の試験方法と基準  
           
        試験方法と基準については、消防法施行令第4条の3、4に定められている。概要は以下の通りである。  
           
      <試験装置  エアーミックスバーナー法〉  
           
        下図のような装置を用いて、試験体にバーナーの炎を近づけ30秒間加熱する。  
           
       

 
           
      〈防炎性能の基準〉  
           
        防炎性能の有無は残炎時間および炭火長により判定され、その基準は次の通りである。  
           
       

・残炎時間

20秒以内

・炭火長

10cm以下
 
           
      く判定方法〉  
           
        定められた6つの試験体すべてが基準に適合する場合、合格とされる。  
           
           
    10.1.5 防音性  
           
     マンション等の集合住宅で、音によるトラブルが発生する場合は、階上での音が階下に伝わり騒音になることが多い。
 一般に、階上の足音や物を落としたときの音が、床から階下へ伝わる音を床衝撃音という。この床衝撃音は、建物の構造、特に床スラブのコンクリート厚と床材の弾力性によって違ってくる。
 床面で発生した音が階下や隣室にどのように響くかについては、床面で発生した音(軽量床衝撃音=LLと重量床衝撃音=LH)の遮音性を示す指数値で比較することができる。
 軽量床衝撃音はL値あるいはLL値で示され、重量床衝撃音はLH値で示される。軽量床衝撃音(L値)での遮音等級による床材の比較が一般的であり、これは、普通コンクリート150mm厚の床スラブに床材を張り付け、その上から機械で衝撃音を与えて、下の部屋で音の大きさを測定する。その結果はL値で表され、下の部屋で聞こえる音が小さいほどL値も低くなり、遮音性能が良いとされる。L値の住宅における生活実感は、表10-1のようになる。
 
           
           
       

表10-1   床衝撃音の遮音等級と住宅における生活実感

 
           
       
遮音等級 人の走り回り 
飛び跳ね
椅子の移動音、
物の落下音など
生活実感
プライバシーの確保
L-30 通常ではまず聞こえない 聞こえない ・上階の気配を全く感じない
L-35 かすかに聞こえるが遠くから聞こえる感じ 通常ではまず聞こえない ・上階の気配を感じることがある
L-40 かすかに聞こえるが遠くから聞こえる感じ ほとんど聞こえない ・上階で物音がかすかにする程度
・気配は感じるが気にならない
L-45 聞こえるが意識することはあまりない 小さく聞こえる ・上階の生活が多少意識される状態
・スプーンを落とすと、かすかに聞こえる
・大きな動きはわかる
L-50 小さく聞こえる 聞こえる ・上階の生活状況が意識される
・椅子を引く音は聞こえる
・歩行などがわかる
L-55 聞こえる 発生音が気になる ・上階の生活行為がある程度わかる
・椅子を引く音はうるさく感じる
・スリッパの歩行音が聞こえる
L-60 よく聞こえる 発生音がかなり気になる ・上階の生活行為がわかる
・スリッパの歩行音が聞こえる
L-65 発生音がかなり気になる うるさい ・上階住戸の生活行為がよくわかる
L-70 うるさい かなりうるさい ・たいていの落下音ははっきり聞こえる
・素足でも聞こえる
L-75 かなりうるさい 大変うるさい ・生活行為が大変よくわかる
・人の位置がわかる
・全ての落下音が気になる
・大変うるさい
L-80 うるさくて我慢できない うるさくて我慢できない ・同上
 
       

(「建築物の遮音性能基準と設計指針」第2版  日本建築学会編)

 
           
      現在、遮音性能を評価する主な指標として、以下の2つがある。  
           
      住宅性能表示制度における「音環境」の評価基準による評価(居室のサッシ等の遮音性能)  
           
      2 日本建築学会の「建築物の遮音性能基準と設計指針」による評価 (表10-2)  
           
           
       

表10-2  遮音等級(L値)と生活実感の対応例(床衝撃音)

 
           
       
特級(特別) 1級(標準) 2級(許容) 3級(最低値)
L40 L45 L50 L55
遮音性能上特に優れている 遮音性能上望ましい 遮音性能上ほぼ満足しうる 遮音性能上最低限度である
特別に遮音性能が要求される使用状態の場合に適用する 通常の使用状態で使用者からの苦情がほとんど出ず遮音性能上の支障が生じない 遮音性能上の支障が生じることもあるがほぼ満足しうる 使用者からの苦情がでる確率が高いが、社会的、経済的制約等で許容される場合がある
 
           
         遮音等級と生活実感のレベルは、集合住宅の場合では、遮音性能上ほぼ満足の許容値はL50、遮音性能が望ましいとされる標準値はL45、L40以下であれば遮音性能が特に優れていると評価される。
 フェルトグリッパー工法で仕上げたカーペットの多くは、L40以下となり、床衝撃音を遮断する効果的な床材といえる。
 
           
           
    10.1.6 防ダニ  
     
    (1) ダニと小児喘息について  
           
          ダニはどこの家にもいる。また、家の中のいたるところにいる。埃と一緒に舞ったり、毛布や布団の中、家具の下、カーペットや畳の中と、その数は状況により大きく異なるが、数万匹におよぶ。
 しかし、人がほこりを吸い込んでいるのと同様に、ダニを吸い込んでも害はない。ただ、少数の人々が、ダニに対して過敏な体質になることがある。これがダニアレルギー体質で、ダニを吸い込むたびに"くしゃみ""鼻炎""ぜん息"等のアレルギー症状が発現するわけである。
 カーペットはハウスダストやダニが小児喘息の発生原因と報道されたときもあったが、実際は調査報告により、寝室における喘息の有症率は非常に低く、実際にはカーペットの敷かれた寝室では浮遊塵が非常に少なく、吸入摂取によるアレルギー発症を抑える機能を持っていることがわかっている。
 
           
    (2) ダニの種類  
           
      家の中で見つかるダニは、以下の通りである。  
           
       
チリダニ ・・・・・ 80%以上を占める代表選手。フケやアカを好む。
コナダニ ・・・・・ 畳のワラ、食品のこぼれを食べる。
ホコリダニ ・・・・・ 埃についたカビを食べる。
サトウダニ ・・・・・ 砂糖、アメ、味噌が好物。
ニクダニ ・・・・・ 干魚類のこぼれを食べる。
イエダニ ・・・・・ ネズミに寄生し吸血するダニ。餓えると人を刺す。
ツメダニ ・・・・・ 他のダニ、特にコナダニを好んで食べる。人を刺すことがある。
 
           
       
人を刺さない
人を刺すことがある
 
           
        これらのダニの中でも喘息・鼻炎・眼アレルギー・アトピー性疾患の原因とされるのがチリダニ・コナダニ・ホコリダニ類といわれている。  
           
           
    (3) 防ダニ加工  
           
      カーペットのパイル糸、あるいは基布に防ダニ忌避剤(ダニをカーペットに寄せ付けない)を練り込んだ商品も開発されている。防ダニ加工繊維製品(カーペット、ふとん綿、ふとん側地)については、防ダニ製品加工協議会が安全性を厳しく審査した上で、試験方法とある一定の評価基準を設定し、適合した製品に対して防ダニ繊維製品の認定を行っている。  
           
           
    10.1.7 抗菌防臭・制菌  
           
     繊維製品(衣料品・寝装品・インテリア用品等)に抗菌剤を付与し、細菌の増殖を抑制して抗菌防臭効果を得るための加工を施すことがある。カーペットについても細菌がパイル表面や繊維内部に入り込み増殖する可能性があるので、例えば衛生を保つ必要のある病院の床等でカーペットを使う場合には、パイル糸に抗菌剤が加工された抗菌カーペットを使用すれば、細菌や微生物の増殖を防ぐことができる。
 繊維製品新機能評価協議会(略称:SEK)では、安全性を厳しく審査した上で、ある一定の試験方法と評価基準に適合した抗菌剤と繊維製品に対して、繊維上の菌の増殖を抑制し防臭効果を示すとして「抗菌防臭加工」(青色マーク)の認定を、繊維上の菌の増殖を抑制し制菌効果を示すとして「制菌加工(特定用途)」(赤色マーク)または「制菌加工(一般用途)」(榿色マーク)の認定を行っている。