第11章 安全衛生  
             
    11.1 安全衛生関係の法令  
             
          
 労働は豊かな生活やより良い社会をつくるために行われるもので、それに従事する者が災害を受けることなどは本来あってはならないことである。労働災害は直接の関係者だけでなく、人間尊重がどういうレベルにあるかを問われ、企業や社会にとっても大きな問題である。このため、わが国には、労働基準法と相まって、労働災害を防止するための危害防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的活動の促進など総合的な対策により、労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成することを目的として労働安全衛生法が制定されている。
   労働安全衛生法は、第3条で事業者の責務をうたい、「災害防止、安全と健康の確保、国が負うべき施策への協力」などを義務付けている。また、同条3項では、「建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせるものは、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない。」としている。続いて第4条では労働者の責務をうたい、「労働災害防止の必要事項を守るほか、事業者が行う災害防止の措置に協力しなければならない。」としている。これで分かるように、労働安全衛生法は「事業を行う者で、労働者を使用する者」に主として義務を負わせている。法の第3章では「安全衛生管理体制」を定め、政令で定める規模以上の事業所の場合には、企業において総括安全衛生管理者等を、建設現場では統括安全衛生責任者等をおくことを義務付けている。
   労働の安全・衛生に関する法規体系は図11-1に示す通りで、労働安全衛生法施行令では管理者など置くべき事業所の規模を定めている。法令に基づく具体的な基準は労働安全衛生規則、その他、ボイラー、クレーン、ゴンドラ、各種有害・危険物質の取り扱い等ごとに規則が設けられている。
   すこやかな心身は幸福の基である。不幸な災害を日常生活から取り除いて、危険のない幸福な生活を送れるようにするのが「安全」の考え方でる。われわれの職場は、設備の整った工場ではなく建築中の建物が主だから、いろいろな機械や運搬設備等があって災害の起きる可能性が多い。しかし、生存のためには仕事をしなくてはならない。
  したがって私達は、人間を守るためにも経済の発展のためにも、職場における安全作業法に理解を深め、そして積極的に実行をしなければならない。そのためには、安全委員会等で危険個所や注意点の再確認をし、チームの場合にはそのことを共有しておくこと、更に救急時に備えて、自主的に救急処置の判断と手順なども体得しておく。
   以上の事柄から、本章は、私達の心得ておかなければならないことを、特にカーペット施工作業に重点をおいてまとめた。
 
           

   

 

 
         
表11-1 労働安全衛生法による安全衛生管理体制
対象 管理責任者等 対象となる規模等 資格等
(企業毎) 総括安全衛生管理者 常時100人以上 工場長等
安全衛生推進者 10〜50人未満 実務経験有る資格者
作業主任者 危険有害作業ある場合 有資格者
産業医 常時50人以上 医師
安全・衛生委員会 常時50人以上 管理者・労働者など
救護技術管理者 ずい道工事等 有資格者
(現場毎) 統括安全衛生責任者 常時50人以上 建設業者
元方安全衛生管理者 常時50人以上 有資格者
店社安全衛生管理者 SRC造など20人以上 有資格者
安全衛生管理者 常時50人以上 関係下請人

      

 
      〈安全に対する意識〉  
        (1) ヒューマンエラーと現場の安全  
           
 最近、色々な場面で「ヒューマンエラー」という言葉を耳にする。直訳すれば「人間の過ち」とでもいうのだろうか。
 今、現場では様々な安全設備や保護具が整備され、その適切な使い方を行っていれば、災害に遭うことはほとんど無く、たとえ災害に遭ったとしても被害は最小限に抑えることができる。しかしながら、建設現場では災害はなかなか後を絶たず、その原因は人間の心理的欠陥や人間の特性から生まれる行動一ヒューマンエラーだと指摘されている。この人間が陥りやすいヒューマンエラーには、以下の13の要素に分類でき、こうした状況になった時、人は自ら危険を招いてしまうことがある。
(1) 未経験・無知・不慣れ (2) 危険軽視・慣れ (3) 不注意
(4) 連絡不足 (5) 集団心理 (6) 近道・省略行動
(7) パニック (8) 錯覚 (9) 中高年の機能低下
(10) 疲労 (11) 単調作業による意識低下 (12) 心配事

 

 
             
        (2) 労働安全衛生マネジメントシステム  
             
           
 これまでの安全衛生管理は、災害が発生した後に、その体験をもとに再発防止に主眼を置いた対策が検討されてきた。しかし、この安全衛生管理手法では常に後追いの対策になってしまい、同じ誤りの繰り返しは減るものの、将来の災害についての視点がない。また、これまでは各社に、実務経験豊かな「安全のプロ」的な人がいたが、これからはいつもこういう人がいるとは限らない。また、安全衛生管理のノウハウも企業から失われつつある。そしてさらに、厳しい経済環境を受けて、安全衛生管理の分野においてもその効率化と確実な成果がこれまで以上に求められている。
 労働安全衛生マネジメントシステムとは、まず事前にすべての作業から予想される危険性や有害性を特定し、合わせてそれを除去あるいは低減する方法を検討する。つまり、いままでの「事後の安全」から「先取りの安全」への転換を図るわけである。
 次に、安全衛生に関する職務や必要な事項を文章や帳票として整理・明確化し、安全衛生実務の経験の浅い人でも職務が行えるようにする。
 さらに、事前の安全衛生対策の検討から日常管理、その定期的なチェック、不具合の改善までを、「計画(P)」→「実施(D)」→「評価(C)」→「改善(A)」というサイクルで順番に行い、常に自律的に安全衛生水準の向上を図る。