第2章 施工準備
2.1 一般事項と作業管理
 床仕上げ施工は、直接施工する者の技術技能が施工品質を大きく左右するため、作業する者の中から作業責任者を選出し、工事の円滑な進行をはかる。また施工環境を整備し、施工要領書にしたがい、下地の確認、施工箇所の順序、割付け図の作成及び割付け、材料の確認、施工、安全衛生などの作業を完壁に行うことが大切である。
2.1.1 作業の流れ
 床仕上げ作業は、大きく分けて下記表2-1の通り、「施工計画」と「施工の実施」に分けられるが、施工に当たっては、それぞれの各項目を完壁に実行することにより、より良い仕上げができる。
 

 

2.1.2 作業の管理
(1) 室温
 ビニル床材及び接着剤は、温度による影響を受け易い。すなわち夏期高温時には床材は軟らかくなり伸び、接着剤はオープンタイム、張り付け可能時間及び圧着可能時間が短くなり、冬期低温時には、床材は硬くなり、接着剤はオープンタイムなどが極端に長くなる。
 作業現場の室温は、10〜25℃を標準とし、5℃以下の場合はジェットヒーターなどで採暖し、接着剤は酢酸ビニル樹脂系溶剤形またはビニル共重合樹脂系溶剤形などを使用し、入念に圧着を行う。
 高温時には接着剤の硬化時間が短くなるので、室温、湿度及び通風などを考慮して、1回の塗布面積を決める。
 特にエポキシ系接着剤は、常温による化学反応で硬化し、夏期高温時には硬化時間が極端に短くなるので、1回の混合量、1回の塗布面積には細心の注意を要する。
(2) 換気
 溶剤形接着剤は塗布した後、空気より比重の重い有機溶剤が床面近くに滞留するので、トーチランプ、ライターなどの取り扱いには充分注意する。
 また作業中、有機溶剤を吸引し中毒症状を起こすことがあるので、窓などの開口部は開け放ち、換気を良くしておく。
 開口部のない部屋、地下室などの作業には、有機ガス用防毒マスクを着用し、必要に応じ防爆形換気装置により作業員の健康管理に細心の注意をする。
(3) 採光
 夜間作業、日没の早い冬期の夕暮れなどの作業においては、部屋の隅の細かい加工及び危険防止のため、照明器具を設置し作業環境を良くしておく。作業現場においては、照度を150ルクス以上とする。(労働安全衛生規則第604条)
(4) 塗装、壁装、天井、設備などの関連工事と連携を密にし、工事の円滑な進行をはかる。
(5) 材料の積算
1> 床仕上げ施工における使用材料の積算は、特に綿密に行わねばならず、床仕上げ施工において最も大切な業務である。
2> 材料積算は、設計図書の内のりにより必要数量を積算する。
3> 積算した材料の数量と設計図書の実面積とを照合し、その検算を行う。
(6) 施工要領書の作成
1> 設計図書(仕様書、特記仕様書)により施工要領書(2部)を作成し、監督者に提出し、承認捺印を受け1部を保管しておく。
2> 床仕上げ作業の進行中、設計変更などが発生した場合、施工要領書を活用し、監督者と協議の上、工事契約を書面をもって行う。単に口頭だけで工事を行った場合、後日トラブルが発生することがある。

(7)

施工要領書の記載項目
1> 概要
2> 適用工事の範囲
3> 工事の概要
工事現場、施主、設計事務所、建設業者、内装仕上工事業者
4> 内装工事業者の組織図

社名、住所、電話、代表者、施工管理者、作業責任者、保有資格、作業者
5> 工程表

材料搬入日、作業場所明細、工期、検査日、検査項目
6> 使用材料

主材料(品番、規格、メーカー)、補助材料(品番、規格、メーカー)
7> 下地の検査と調整方法
8> 施工方法

揚重、割出し、施工順序、ワックス仕上げ、廃材処理法
9> 安全管理

安全行事、作業員の健康診断書、安全規則
10> 保守管理

火気、保全に関する必要事項
2.1.3  下地の確認
  施工予定の10〜15日前には、必ず下記の各項目について施工現場の状況を確認する。
  確認を怠ったり、施工直前の確認は、不備があっても対応ができず、そのまま施工をすると取り返しのつかないクレームになる。
(1) 平滑
   床仕上げ施工で、下地の平滑が仕上げの良否を大きく左右することは、誰もが認めていることだが、現実には案外軽視されている。
   特にコンクリート下地、モルタル下地においては、一見平滑に見えても、実際に施工完了後、ワックス仕上げをすると、仕上げ表面に下地の波打ち、こてむらがそのまま現われ見苦しい仕上がりになる。
   また凹凸のため接着剤が均一に塗布できず、床仕上げの接着強度が大きく低下し、剥離の原因となる。
   特に壁と床との取り合い部のモルタル滓などの付着、取り合い部の蛇行には注意をしなくてはならない。ソフト幅木を張り付けた場合、ソフト幅木の袴下部に隙間ができ見苦しい仕上がりとなり、手直しが困難となる。
〈対策〉
1>軽度のこてむら
鋭利なケレン棒または、サンダーなどで軽くケレン掛け、研磨をし、真空掃除機、湿したオガ屑などで粉体を清掃する。
2>大きな突起
グラインダー、ハツリ機などで削り取り、清掃後下地補修材を薄く塗布し、平滑にする。
3>穴、窪み
補修箇所をよく清掃し、硬練り用または速硬性の下地補修材を充てんし、平滑にする。
4>クラック
細いクラック(ヘアークラック〉の場合は、クラック部をVカットし、よく清掃してから速硬性の下地補修材を充てんし、平滑にする。構造クラックの場合は、クラック部を大きめにカットし、よく清掃してからパッキング材を詰め、エポキシ系充てん材を充てんし、平滑にする。

(2)

乾燥
 下地の乾燥が充分でないと、強い接着効果が望めないので、できるだけ乾燥期間を取る必要がある。
 地下水が上昇する恐れのある下地及び階下の部屋(浴室、厨房など)で出す湿気が、スラブを通して上昇する下地などには、防湿層を設ける必要があるので、その有無の確認をする。
 下地の乾燥度を測定するには、モルタル水分計(高周波水分計)がある。
 施工予定日の10〜15日前から、モルタル水分計で定期的に下地含水率を測定し、測定値(8%以下)に変化がなくなったことを確認する。
<対策>
1> 乾燥が不充分の場合は、適時、窓など開口部を開け換気をよくする。
2> 施工日までに乾燥が不充分と判断した場合は、監督者と協議し、工期を延ばしてもらう。
(3) 強度
1>コンクリート下地、モルタル下地
コンクリート打設及びモルタル仕上げ直後の強風、夏期においての急激な乾燥、水セメント配合比の水の過剰、及び冬期における凍結などによる粉ふき、ざらめなどの脆弱な下地には、浸透性のある下地補強剤を塗布して補強をする。但し、この処理方法はあくまで表面のみが脆弱の時の対処法であって、その欠陥が甚だしい場合は、監督者との協議の上、下地の打ち直しをする。
2>木質床下地
根太間隔の取り過ぎ、及び二重張り床の下張り板、上張りまたは合板張り床の合板厚さ不足などによりたわみがある時は、監督者と協議の上、補強、つくり替えを依頼する。

(注) 根太間隔300oまたは360mm、二重張り床の下張り板厚さ15mm以上、上張り合板厚さ5.5mm、合板張り床厚さ12mm以上
3>鋼板床下地
継ぎ目溶接の不備、厚さ不足などによるたわみ、振動のある場合及び取り付けネジの突出、溶接余盛りのある場合は、監督者にその処理を依頼する。
(4) 目違い、浮き
1>コンクリート下地、モルタル下地
金槌などで叩いて浮いているような音がする場合は、浮き部に数個のさく孔をあけ、エポキシ系の注入剤を注入して浮きを固定する。但し、床の全面が浮いている場合は、モルタルの塗り直しを監督者に依頼する。
2>木質床下地
木質床下地で合板の目違いの部分は、サンダー掛けなどで平滑にし、釘留めの不足による浮きは、補強のため増釘を打つ。また、釘頭の飛び出しは、板面より沈む程度に打ち込む。
(5) 付着物
1>コンクリート下地、モルタル下地
床表面に付着したモルタル滓及びその他の突起物は、完全にケレン掛けを行い除去し、入念に清掃する。油脂類が付着している場合は、溶剤を用いて拭き取るか、中性洗剤で洗い落とす。また、油脂類が下地に深く侵み込んでいる場合は、その部分をハツリ取り、新しく下地の打ち直しを依頼する。
2>鋼板床下地
鋼板表面に付着しているモルタル滓及び錆などは、完全にサンダーなどで削り取る。また、表面に塗布してある防錆塗料がエポキシ、ウレタン系の塗料であるかを確認し、もし普通防錆塗料(鉛丹など)が塗布してある場合は、削り取り、塗り直しを依頼する。普通防錆塗料を塗布した上にプラスチック系床材を張ると、錆の発生により防錆塗料ごと剥離してしまう。
(6) 取り合い部
 開閉部の扉下の床高を点検し、扉がつかえるような場合は、サンダーなどを用いて手直しをする。
 また、配管、設備機器などとの取り合いに支障がある場合は、監督者と協議の上、適切な処置をする。
(7) 既存床
 ビニル床タイル、ビニル床シート、プラスチック系塗り床などの既存床を下地とする場合は、剥離、破損などの有無を調べ、それぞれ捨て張りまたは下地補修材で平滑にする。
 全面的に接着不良の場合は、全面を剥離し、下地調整をし平滑にする。