第3章   接着剤
 
 接着剤は、各床材メーカーが各々の床材の種類に応じて最も適したものを準備しており、他の接着剤専用メーカーも同様に、床材の種類に最も適したものを専用またはその認定品として準備している。
 また、接着剤は下地の種類や状況に応じても使い分けしなければならない。決められた接着剤も、タイミングや塗布量、圧着の程度、施工後の使用条件によってかなり働きが異なり、床材の性能は接着剤の種類と使い方に大きく依存する。
 
3.1 分類
 
 接着剤は、JIS A 5536ビニル床タイル・ビニル床シート用接着剤で表3-1のように基本的な分類がなされているが、シート用特殊用途などを含め、当面必要とする主な接着剤を分類すると表3-2となる。
 このように床材の接着剤は、高分子物質を溶剤に溶かしたもの(溶剤形)か、または水に分散させたもの(エマルション形)が主体で(※エマルションに対して、ゴム成分を水に分散させたものを特にラテックスと呼ぶ〉、この他に反応硬化形(注)がある。
 これらいずれの形の接着剤も、下地に塗り易いように適度な粘性(ねばりけ)を持っており、塗布してからは溶剤または水の揮発によって床材を張るのに適した粘着性(べたつき)が出てくるようになっている。しかし個々の接着剤についてみると、その使用方法や性質はそれぞれ異なっているので、その点をよく知って使用する必要がある。
       
 
(注) 反応硬化形接着剤は、化学反応によって硬化するもので、床タイル、床シートの施工には、エポキシ系のように硬化剤と反応するものや、ポリウレタン系、アクリレート系のように湿気(水分)と反応するものが使用されている。
 
 
表3-1 主成分による区分
種  類 主 成 分 内 容
 酢酸ビニル樹脂系
 エマルション形接着剤
 酢酸ビニル樹脂を主成分としたエマルション形のもの
 酢酸ビニル樹脂系
 溶剤形接着剤
 酢酸ビニル樹脂を主成分とした溶剤形のもの
 ビニル共重合樹脂系
 エマルション形接着剤
 アクリル・酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を
 主成分としたエマルション形のもの
 ビニル共重合樹脂系
 溶剤形接着剤
 アクリル・酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を
 主成分とした溶剤形のもの
 アクリル樹脂系
 エマルション形接着剤
 アクリル樹脂を主成分としたエマルション形のもの
 ゴム系
 ラテックス形接着剤
 天然ゴムまたは合成ゴムを主成分としたラテックス形のもの
 エポキシ樹脂系接着剤  エポキシ樹脂を主成分とした主剤と、ポリアミン類を主成分とした硬化剤
 の2液反応形のもの
 
 
表3-2 主な接着剤


種類 主成分 揮発性成分 備    考
(JISその他の参考規格)
 酢酸ビニル
 樹脂系
 溶剤形  酢酸ビニル樹脂   アルコール系 (JIS A 5536)
 エマルション形   水 (JIS A 5536)
 EVA系  エマルション形  エチレン・酢酸ビニル共
 重合樹脂
  水
 アクリル系  エマルション形  アクリル樹脂   水
 クロロプレン 系  溶剤形  クロロプレンゴム   芳香族炭化
 水素系
両面塗布工法
 SBR系  ラテックス形  スチレン・
 ブタジエンゴム
  水 (JIS A 5536)
 ニトリル系  溶剤形  アクリロニトリル・
 ブタジエンゴム
  エステル系
 ケトン系
両面塗布工法
 ラテックス形   水 (JIS A 5536)
 エポキシ系  反応硬化形  主剤・エポキシ樹脂   アルコール系 (JIS A 5536)
 硬化剤・ポリアミド
 またはポリアミン

 ブチルゴム系  感圧形  天然ゴムまたは
 再生ゴム



 アクリルゴム系  アクリル、
 塩化ビニル樹脂
 ポリウレタン系  湿気硬化形  イソシアネート、
 ポリオール
  芳香族炭化
 水素系

 アクリレート系  湿気硬化形  シアノアクリレート
瞬間接着剤
 
 
3.1.1 酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤
 
 酢酸ビニル樹脂を主成分としたエマルション可塑剤、充てん材などを添加した、一般的には白色接着剤であり、接着強度も比較的良好なものである。
 
 
<長所>
  年間を通じて塗布作業性にすぐれ、張り付け可能時間が長い。
  エマルション形なので引火性・毒性がない。
  容易に拭き取れ、床材を汚すことがない。
  床材に悪影響を与えることがほとんどない。
     
短所>
  初期粘着性があまりない。
  下地の湿気により、再乳化(接着剤が再び軟化し、液化すること)して接着強度が低下する。
  0℃以下で凍結することがあり、寒冷地での冬期の使用ができない。
  鋼鈑下地へは、錆が発生するので直接使用はできない。
     
<取り扱い注意点>
  使用時の温度を5℃以上にし、低温時の施工には充分注意する。
  保管状態にも注意し、5℃以上に保管する。
 
3.1.2 酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤
 
 酢酸ビニル樹脂を主成分として、炭酸カルシウムなどの充てん材を加え、溶剤にアルコール系を使用した接着剤である。
 種類によって乾燥が早いものから、遅いものまである。
 
 
<長所>
  初期接着力にすぐれ、乾燥固化することによって強い接着強度が得られる。
  比較的各種の床材に使用でき、速乾性のものは垂直面にも使用できるなど、使用範囲が広い。
  寒冷地の冬期使用も可能である。
     
<短所>
  張り付け可能時間を過ぎたものは全く接着しないので、タイミングに充分気を付ける。
  下地からの強いアルカリ水分に対しては、水溶性の物質と、酢酸に分解するので、湿気の恐れのある下地には使用できない。
     
<取り扱い注意点>
  溶剤形であるため、引火・毒性に注意し、特に施工時には火気及び換気に充分注意する。
  保管時には消防法上の集積制限に充分注意し、特に夏場の直射日光に配慮する。
 
3.1.3 ビニル共重合樹脂系エマルション形接着剤
 
 アクリル・酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を主成分とした、エマルション形の接着剤で、3.1.1の酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤に、初期粘着性、張り付け可能時間の延長、接着強度のアップなど性能を向上させたものであり、見かけ上は3.1.1と全く同様である。
 
 
<長所>
  酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤に比較して初期粘着性にすぐれている。
  張り付け可能時間が長い。
  他は3.1.1のそれに準ずる。
     
<短所>
 

初期粘着性の点以外は、3.1.1のそれに準ずる。
     
<取り扱い注意点>
 

3.1.1のそれに準ずる。
 
3.1.4 ビニル共重合樹脂系溶剤形接着剤
 
 アクリル・酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を主成分とした溶剤形の接着剤である。
 
 
<長所>
  接着性が大幅にアップ。
  軟質のビニル床材料にも使用可能。
  その他は3.1.2のそれに準ずる。
     
<短所>
 

3.1.2のそれに準ずる。
     
<取り扱い注意点>
 

3.1.2のそれに準ずる。
 
3.1.5 アクリル樹脂系エマルション形接着剤
 
 アクリル樹脂を主成分としたエマルション形の接着剤で、3.1.1の酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤に比較して、初期粘着力、張り付け可能時間、接着強度などの性能を向上させたものであり、見かけ上は3.1.3と全く同様である。
 この種のものでピールアップ性を付与したものが、オフィス向けとして需要が高まっているタイルカーペットに使用されている。
 
 
<長所>
 

3.1.1のそれに準ずる。
     
<短所>
 

3.1.1のそれに準ずる。
     
<取り扱い注意点>
 

3.1.1のそれに準ずる。
 
3.1.6 ゴム系ラテックス形接着剤
 
 合成ゴムを主成分としたラテックス形の接着剤で、接着剤の主成分は、ほとんどがスチレン・ブタジエンラバー(SBR)であり、これらに粘着性樹脂、充てん材などを配合した淡黄色の接着剤である。
 
 
<長所>
  塗布性及び初期粘着性にすぐれている。
  張り付け可能時間が長く、価格は比較的安い。
  引火性・毒性がない。
     
<短所>
  接着強度はそれほど高くない。
  下地湿気により、再乳化して接着強度が低下する。
  0℃以下で凍結することがあり、寒冷地での冬期の使用ができない。
  鋼板下地へは、錆が発生するので直接使用できない。
     
<取り扱い注意点>
  使用時の温度を5℃以上にし、低温時の施工には充分注意する。
  保管状:態にも注意し、5℃以上に保管する。
 
3.1.7 ゴム系溶剤形接着剤
 
 主としてクロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)の合成ゴムの溶剤形接着剤であり、ほとんどの床材料に対して高い接着性を示し、くせのある床材料の下地への納まりが良い
 一般には、床材裏面と下地の両面に塗布し、乾燥後張り合わせて使用する。
 
 
<長所>
  初期接着力にすぐれている。
  ほとんどの床材料に対して高い接着性を示す。
  くせのある、または剛性の強い床材料に対して、下地への納まりが良い。
 
<短所>
  両面塗布で使用するため、作業性が悪い。
  溶剤による影響を床材が受ける場合があるので、所定のオープンタイムを取って充分に溶剤を揮発させる。
  床材の種類によっては、汚染着色することがあり、充分に注意する。
         
<取り扱い注意点>
  溶剤を多く含んでいるため、火気・毒性・換気・通風などに充分注意する。
  保管時の集積制限に充分注意し、夏場の直射日光に配慮する。
     
         
<その他>
  クロロプレン系 床材料中の可塑剤の移行を受け易く、接着強度の低下、床材の縮み、剥がれなどが発生するので、ソフト幅木には入隅・出隅部分以外には使用できない。
  ニトリル系 クロロプレン系に比較して可塑剤の移行は受けにくい。
軟質のビニル床材にはこの接着剤を使用する。
 
3.1.8 エポキシ樹脂系接着剤
 
 エポキシ樹脂を主成分とした主剤と、ポリアミン類を主成分とした硬化剤との2液反応形のもので、通常は主剤と硬化剤を1:1に混合して使用するものがほとんどである。
 ほとんどの床材料に対して強い接着強度が得られ、適用範囲が広く、耐水性にすぐれている。
 
 
<長所>
  接着強度が高く、耐水、耐酸、耐アルカリ、耐薬品などにもすぐれている。
  工場、実験室、屋外などの特殊条件の場所にも使用できる。
     
<短所>
  コストが比較的高く、2液混合の手間がかかる。
  低温時には硬化時間が長くなり、逆に高温時には短くなるので、張り付けのタイミングに注意が必要である。
  一度混合したものは保存できない。
     
<取り扱い注意点>
  引火、毒性に充分注意する。
  皮膚に付着しないように気を付ける。
 
3.1.9 ポリウレタン系接着剤
 
 ポリウレタン、ポリオールを主成分に、溶剤にトルエンなどを混合した湿気硬化形1液性接着剤であり、下地の湿気と反応して硬化するものである。
 エポキシ樹脂系接着剤と同程度の耐水強度が得られる。
 
 

<長所>

  1液性のため作業性が良い。
  耐水強度が強く、軟質ビニルシートへの接着性もすぐれている。
     
<短所>
  塗布量が多いと、反応する時のガスの発生量が多くなり、床材がふくれる恐れがあるので塗布量には充分注意する。
  一度缶から出した接着剤は戻せない。
     
<取り扱い注意点>
  空気中の湿気と反応硬化するので、一度開けた缶は完全に密封し、冷暗所に保管する。
  換気・皮膚への付着に注意する。
     
 
3.1.10 シアノアクリレート系接着剤
 
 一般的に瞬間接着剤として知られている1液湿気硬化形のもので、空気中または接着面上の微量な湿気と反応して硬化する。また、硬化促進剤との併用により、硬化時間がさらに短くなったものまである。
 ポリエチレン、ポリプロピレン以外のほとんどのものによく接着し、金属・ゴム・プラスチック用の粘度の低いものから、木工用の中粘度のもの、木口用の高粘度のもの、最近は垂直面用のたれないゼリー状のものまである。ゼリー状以外のものは、塩ビシートの継ぎ目にも使用できる。
 
 
<長所>
常温で急速に重合硬化して、接着強度が強い。
硬化皮膜は無色透明である。
<短所>
耐水性、耐衝撃性、耐熱性が弱い。
使用量が多いと、白化現象の原因となる。
<取り扱い注意点>
保管には温度、湿度、日光に充分注意し、湿気のない冷暗所に保管する。
眼に入った場合は直ちに大量の水で洗い、医師の手当を受ける。
軍手などには多量に吸い込まれ、急速に硬化する時に発熱するので、軍手使用時には充分注意する。
 
3.1.11 両面粘着テープ
 
 両面粘着テープは、不織布、フィルムなどを芯材とし、両面に粘着剤が塗布され、離型紙をはさんでテープ状にしたものである。
 塗布されている粘着剤はクロロプレンゴム、ポリウレタン、ブチルゴム、再生ゴム、アクリル、SBRなど種類も多く性質も違うので、使用する時は注意が必要である。
 例えば再生ゴム、ブチルゴム系の粘着テープなどは、床シート施工後、テープの跡が表面ににじみ出ることがあるので注意しなければならない。
 したがって、床シートにはアクリル系など両面粘着テープが適当である。
 両面粘着テープによる床材の施工は、離型紙を剥がし、接着剤自身の粘着性による簡易的な接着工法であるから、使用場所は一般家庭、展示会用の仮固定程度に使用し、学校、病院、一般商業ビルには使用しない。
 やはり、床材指定の接着剤による全面接着施工をするようにすべきである。
 
 
注意しなければならないことは
  (1) 下地に埃が付着していると、充分な接着力が得られないので、充分な清掃と、必要に応じてプライマーを塗布しなければならない。
  (2) 下地表面が湿っていたり濡れていると、粘着テープは接着しないから、充分下地が乾燥してから床材を接着する。
       
<両面テープの主な規格>
 幅 25、30、40、50mm
 長 さ 5、10、15、20、25、30、50、70、100m
 厚 さ 1.0mm以下