森林資源保護に寄与するという観点からケナフが注目されている。ケナフで紙を漉くことができ、畑で栽培可能な1年草なので資源枯渇が皆無という。最近は紙だけでなく、ボード等の建材分野でもケナフが使われている。環境共生時代を迎え、ますます注目度がアップしそうである。

ケナフは英語でKenafだが、語源はペルシャ語で麻という意味のKenabからきている。名前のとおりケナフは広義の意味で「麻の仲間」と表現しても誤りではないが、学術的にはアオイ科ハイビスカス族の1年草である。素人にもハイビスカス族と理解できるのは、ケナフの花が黄色である点を除けばハイビスカスと極めて似ていることだ。このケナフは類稀(たぐいまれ)な早育成の植物で、原産地タイでは雨季の来る前の5月頃に播種(はしゅ)すると10月頃には茎径3cm、高さ3mほどに成長し刈り取りが可能となる。この大きさであるゆえ、草というよりは木のイメージである。
現在は世界中に分布しているケナフだが、原産地はアフリカ西南部という説が有力で、アフリカ西部から東西2つのルートに別れて伝播(でんぱ)したと推定されている。まず東へ向かったユーラシア・ルートは地中海を経て中東、インドへ伝わり、ここから北方系と南方系の二つに分岐して行く。北方系は旧ソ連を経て山東省や河北省(かほくしょう)などの中国北部に伝わり定着した。一方、南方系はインドネシア半島を経てオーストラリアと中国南部に伝わった。この南方系を中国では紅麻(こうま)、日本ではタイケナフと呼んでいる。それに対して西へ向かった大西洋ルートは、アフリカから大西洋を経て中南米に伝わって定着。これをキューバケナフと呼んでいる。
紙や建材等の材料としてのケナフは殆どがタイからの輸入であるため、当然タイケナフである。一方、環境保護キャンペーンの一環として国内各地で栽培しているのは耐寒性のキューバケナフである。東北地方の比較的寒い地域でも栽培できるのはこの理由である。この2種類のケナフは外観が似ているため区別がつかず、紙の原料としての優劣も殆どない。
ケナフと人間のかかわりは古く、4千年前頃には古代エジプトで既に栽培されていたようである。事実、ミイラを包んでいる包帯状の布を分析するとリネン(亜麻)に混じってケナフ繊維が確認されるという。また日本の麻業界でも戦前からケナフの皮部分の靭皮繊維(じんぴせんい)を「白麻」と呼び商品として取り扱っていた。このように最初は布を織る植物繊維として利用されていたが、紙原料として利用されるようになったのは比較的最近のことだ。1960年頃に米国イリノイ州にある農務省所属の北域研究センターが「紙原料になる繊維作物プロジェクト」を発足させ、紙原料としてのケナフに注目してからである。プロジェクトは23年の歳月をかけて紙の原料となり得るケナフ、バガス、ヘンプ、竹など約3千種類の非木材植物を集め徹底的に研究した。その結果、紙原料として最高点を獲得したのがケナフである。
ケナフが最高点を得た理由を要約すると「紙の原料として優れた点を多くもっているため木材パルプの代用として森林資源保護に寄与する」というものである。また最近は「ケナフ自身も二酸化炭素の吸収・固定能力が高いので地球温暖化防止に貢献する」という側面も注目されている。これらの特徴を箇条書きにまとめると次の5点になる。
| ① |
皮部分に良質な靭皮繊維を含んでいる。 |
| ② |
茎は木質で良質なパルプを多く含んでいる。 |
| ③ |
類稀な早育成植物で、単位面積当たり収穫量が大きい。 |
| ④ |
栽培植物なので計画生産が可能。 |
| ⑤ |
早育成植物なので二酸化炭素の吸収・固定能力が高い。 |
若干補足すると、ケナフは全茎中20%を良質な紙原料となる靭皮繊維が占めている。そのうえ茎も木質でパルプ質を多く含んでいるため良質な紙が得られる。また半年で3メートルの高さに成長するように早育成のうえ、密集して植えても大丈夫な多密栽培型1年草植物なので収穫率が極めて良く、安定供給のための計画生産も可能である。この計画的に供給できる栽培植物という点がバガスに代表される農業副産物や、竹に象徴される野生植物と根本的に異なる点であり、ケナフの注目度が高い理由でもある。
日本の非木材紙の使用比率は先進国で最低である。それだけにケナフに代表される非木材紙は今後益々注目を浴びるだろう。
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