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沖縄特産の月桃紙

 
 
 

沖縄では月桃(げっとう)と呼ぶ多年草植物(写真)を使って漉いた月桃紙が人気である。変わった名前なので覚えやすい。昔から沖縄に自生している土着の植物、おまけにロマン溢れる名前なのでヒットしたようだ。
最近では土産物店に必ず民芸品として並べてある。また県営住宅では襖紙として採用しているという。



沖縄を旅するといたるところに月桃が自生している。広辞苑は「ショウガ科の多年草。インド原産で、東アジアの熱帯、沖縄や九州南端部、小笠原などで栽培。高さ3m。夏、芳香ある淡紅色の美花をつける。果実は球形。葉は70㎝に達し、食物などを包む。茎はマット・魚網などに使用・・・」と説明している。もちろん呼名は月桃だけでなく、サンニンやオオクマタケラン、或いは九州では砂仁(しゃにん)と呼んでいる地方もある。また月桃はショウガ科に属するため、中国では艶山姜、英語ではシェル・ジンジャーと呼んでいる。

とにかく月桃の用途は広く、元大蔵省印刷研究所長の森本正和氏も著書『環境の21世紀に生きる非木材資源』で、「単繊維は長さ1.0~6.8㎜、巾6.6~33μmである。葉には40%の繊維を含み、製紙原料にも使える。茎皮部を蒸解して、収率45%で漂白パルプが得られる」と述べている。
このように繊維や紙の用途としてはもちろん、それ以外にも那覇市の首里儀保町(しゅりぎぼちょう)で売られている名物『ぎぼまんじゅう』のような例もある。この饅頭(まんじゅう)は表面に食紅で「の」の字が書かれたつぶし餡で、月桃の葉で包まれているため非常に香ばしい。
『ぎぼまんじゅう』が象徴するように沖縄では月桃には腐敗を防止する効力があると伝承されている。また葉で食物を包むだけでなく、これから採るエキス、即ち月桃精油を配合した防虫・抗菌剤の人気も地元では高い。

当然、紙の場合も抄紙(しょうし)段階で月桃精油を混入するという発想が出てきても不思議ではない。この月桃精油を抄紙した月桃紙の厚手と薄手の二タイプの抗菌テストを大阪市立工業研究所で評価をしたところ、厚手タイプに関しては大腸菌と黄色ブドウ球菌で良好な結果が出たが、薄手タイプに関しては顕著な効果が見られなかったという。したがって考察欄にも「実用化を考えると月桃紙の厚みと抗菌性の関係を明確にすることが必要と思われる」と記入されている。

一方、防虫効果については、琉球大学の森田教授が昭和63年10月の『日本建築学界大会学術講演梗概集』で「畳におけるダニの挙動と月桃成分の防虫効果について」と題して述べているが、ここでは「月桃精油の忌避効果が確認された」と結論付けている。月桃から抽出する月桃精油は間違いなく抗菌・防虫効果があるようだ。また月桃紙を用いた壁紙も一定の効力があるものと思われる。但し安全品質をPRする際に重要なことは多角的観点からの科学的データーによる裏付けである。
これさえクリアーしていれば、「月桃紙」というネーミングがロマンを感じさせるうえ、商品にストーリー性があるだけに面白い。

実際、2000年に開催された九州沖縄サミットのメイン会場である万国津梁館(ばんこくしんりょうかん)では月桃紙を使っている。万国津梁とは「世界の架け橋」を意味し、首里城正殿の梵鐘(ぼんしょう)に刻み込まれている銘文から名付けられた。実にサミットに相応しい名前である。万国津梁館には米国のクリントン大統領やロシアのプーチン大統領、フランスのシラク大統領、英国のブレア首相等、世界九カ国の首脳が集うだけに建物に凝ったことは言うまでもない。
場所は風光明媚な部瀬名岬(ぶせなみさき)の突端。ここに会議棟・ラウンジ棟・レセプション棟を建設した。総面積は3300㎡で30億円の建設費を投じている。屋根は南国の青い空に映える沖縄特産の赤瓦を7万枚以上も使用。壁面と床はサンゴ礁からできた琉球石灰岩。棚等は沖縄県木の琉球松。



目玉は大きなシャンデリア(写真)で、ガラス製ではなく沖縄特産の月桃から漉いた紙製である。北海道洞爺湖(とうやこ)サミットの会場である「ザ・ウインザー洞爺リゾート&スパ」でも環境配慮のインテリア商品を優先的に採用したという。時代は間違いなく「環境共生」へ進んでいる。