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環境に優しいリノリウム
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環境に優しいリノリウム
環境共生時代を迎えて床材のリノリウムが注目されている。耐久性に優れるという理由以外に天然素材という点も評価が高い。だが本当の理由はリノリウムの原材料(写真)が林や畑でリピート生産可能な難枯渇性資源ばかりということだろう。だとすれば評価されるのは当然である。
リノリウム世界生産量は3600万㎡前後で推移している。数年前、ニューズウィーク誌は「人類を変えた発明」というテーマで人類史に於いて画期的と思われる発明品の特集を組んだ。火薬や製紙・羅針盤・コンピューター・DNA等の画期的な発明ばかりをリストアップしていたが、驚いたのはインテリア商品の中で唯一リノリウムが選ばれた事である。この事実が物語るようにリノリウムの評価は欧米では極めて高い。もちろん日本でも明治中期から昭和30年頃までは床材の主役を務め、各地の建築物にリノリウムが続々と採用されて行く。だが昭和30年代から始まる高度経済成長は塩ビ隆盛の時代を迎え、これと反比例してリノリウム市場は縮小してしまう。これは塩ビ床材の持つコスト競争力と施工性をゼネコンなどが高く評価した事が大きい。加えて昭和52年に東リ㈱がリノリウム生産から撤退した事により存在感は薄れる一方となる。しかし近年は環境問題の浮上に伴い復活しつつある。その意味では高分子系床材の原点でもあるリノリウムを知る事は温故知新(おんこちしん)の点でも重要であろう。
1863年、英国のフレデリック・ウォルトン(写真)はリノリウムを発明して特許を取得する。もちろん突然の発明ではなく、先行してオイルクロスやカプチュリコンという一風変わった名前のシート床材があった。ではリノリウム発明のどこがユニークで画期的かというと、亜麻の実から採る亜麻仁油(あまにゆ)を煮沸・酸化させて作るリノキシン(Lynoxn)を原料として採用した事である。このようにリノリウムは亜麻仁油(あまにゆ)を主体に、コルク紛やジュート(麻)などを使って生産する。亜麻もコルク・麻もどれもが資源面で持続可能な自然素材ばかりである。まず亜麻仁油は亜麻の種子に約3割強の割合で含まれ圧縮して採油する。食用にも供されるほど安全性は高い。また畑で栽培ということはリピート可能な難枯渇性資源を意味している。次にコルクはポルトガルに代表される地中海性気候を好むコルク樫の表皮。この表皮を正確には「コルク層」と呼び、剥いでも再生するので9年ごとの採取が可能である。これはコルク樫の大木を伐採する必要がない事を意味する。換言すると森林資源保護が叫ばれているだけに価値が大きい。コルクの良質な部分はワイン栓として使われる。打ち抜いた後の残材をリノリウムやコルクタイルの材料として使うが、これはマテリアル・リサイクルそのものである。これらの特性を併せ持つコルクは資源保護の優等生と断言して差し支えない。
ではバッキング(裏打)に使うジュートはどうだろうか。麻は早春に播種後(はしゅご)、100~120日で開花期を迎える。花が咲いたら茎を刈って収穫するが、これも亜麻やコルクと同様に畑での栽培が容易なため持続可能なエコ材料と定義できる。このようにリノリウムの原材料はいずれも難枯渇性資源。だから評価が高いのである。
ところで亜麻仁油の英語はリンシード・オイル(Linseed Oil)、ラテン語はリノム・オリウム(Linum Oleum)である。これからも分かるようにリノリウムの名前はラテン語に由来している。余談だがフレデリック・ウォルトンが発明したインテリア材に商品名が英語に由来するリンクルスタ(Lincrusta)という欧米で評価の高い壁装材がある。やはり亜麻仁油が主原料で、日本では国重要文化財の旧京都府庁舎の大会議室に施工されているが、施工後100年以上が経過しているにも拘わらず立派に残っている。
さてリノリウムの特徴を要約すると次の五点になる。
①優れた抗菌性:病院等の医療機関で愛用される理由の1つに抗菌性がある。亜麻仁油が医療用油紙のコーティング剤として使用されている事からも理解できる。亜麻仁油は酸化する過程で抗菌性のアセトアルデヒドを放散する。もちろん放散量は人体に影響を及ぼさないレベルなので安心して頂きたい。
②耐シガレット性:自然素材にもかかわらずタバコの熱にも溶けず焦げにくい。僅かに残った痕跡はスチールウールなどで擦ると残らない。但し過信は禁物で高レベルの耐シガレット性を求める場合は天然石やセラミックタイルなどの無機質床材を使うべきだ。
③優れた耐久性:施工されたリノリウムは一般の塩ビ床材以上の耐久性を発揮する。但しアルカリに弱い性質を有しているため水分率8%以上の下地への施工は禁物である。優れた耐久性は正しい施工が前提となる。
④優れた断熱効果:木質系充填材(コルク)により一般の塩ビ床材と較べて断熱性に優れる。但し断熱性は床材の厚みによっても大きく違い、メーカーによってはリノリウム用下地緩衝材を副資材として用意している企業もある。
⑤廃棄容易性:自然素材なので土中に廃棄してもバクテリアによって自然に還元される。但し剥がしたリノリウムは建築廃材なので法律に従った処理が前提となる。
以上のように長所を多数持つ床材だが、反面、施工の難易度は高く、加えて自然素材特有の色差や臭いの問題も抱えている。この点を十分に理解して施主・設計との交渉に当たるべきであろう。 |
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