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新築住宅着工戸数の動向

   平成19年6月の建築基準法改正は、せっかく回復しつつあった新築住宅市場に冷水を浴びせる結果になった。政府は「官製不況」に対する批判を払拭すべく重い腰を上げたが、その矢先に米国サブプライムローン問題に端を発した大手証券会社リーマンブラザーズの倒産を合図として100年に1回と形容される大不況に見舞われてしまう。
 現在、政府は不況から抜け出すため様々な景気刺激策を講じている。既に民間企業各社の在庫調整と回復が著しい中国経済の影響で、鉱工業生産指数等はある程度は回復しつつある。ところが国民総生産(GDP)の約6割を占める一般消費は前年比マイナスが続き、当分の間はプラスに転じることがなさそうである。理由は雇用環境が相変わらず厳しく、リストラされるかもしれないという恐怖が存在しているからである。当然、一般消費者は非常事態に備えて財布の口を硬く閉める。
 さて20年度の新築住宅着工戸数は103万9180戸であった。これは前年比0.3%増で、前年の減少から再び増加したとはいうものの僅か。新築住宅着工床面積は8634万4千㎡で前年比2.3%減。2年連続の減少であった。
 総括するため過去を検証しよう。戦後最高を記録した新築住宅着工戸数は、昭和48年度の191万戸である。これ以降は一進一退を繰り広げながらも減少していく。それでも平成2(1990)年度は166万5千戸を記録した。
 底を打ったのは14年度の114万6千戸。これ以降は増加に転じる。その最大の牽引役は、昭和46年から49年生まれの団塊ジュニアである。持家志向の強い彼らが坪25万8千円をうたい文句にするパワービルダーと呼ばれる住宅会社から住宅を購入、或いは比較的リーズナブルな郊外型マンションを購入する。その結果、住宅着工戸数が伸びた。18年度は128万5千戸を記録する。
 ところが19年6月の改正建築基準法は、世間を騒がせた耐震基準の偽装問題に神経質になるあまり「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」結果になった。換言すると二重チェック等の厳しい審査をした結果、全国の建築現場に大きな混乱を生じさせ、19年度は103万6千戸まで落込んでしまう。20年秋以降の不況の逆風は予想した以上に大きかった。期待された20年度は前述したとおり前年横這いである。
 しかし留意すべきは、新築住宅着工戸数の減少は単に不況の影響だけでなく、日本社会が構造的に抱える幾つかの問題に起因していることである。したがって仮に不況が回復したとしても、新築住宅着工戸数は一進一退を辿りながら減少すると思われる。その幾つかの問題とは次の5点である。

 ① 人口の減少と高齢化の進展:我国の人口は平成18年をピークに減少を開始。政府は児童手当増等の対応策を打ち出しているが焼け石に水の感が強い。人口が減れば住宅購入者も減少する。特に人口減が少子高齢化を伴って進行するだけに尚更であろう。
 ② 総世帯数よりも多い総住宅数:総務省発表の平成17年度の総世帯数は4716万所帯、それに対して住宅ストック数は5389万戸で完全に逆転している。平たく表現するなら既に飽和状態にある。
 ③ ゼロ金利政策解除による金利上昇:現在は経済指標が芳しくないため金利は低めに据え置かれている。しかし長期的に見た場合、現在が異常な低金利だけに徐々に上昇するのは確実である。資金を100%借入に頼る団塊ジュニアにとっては住宅購入意欲に水をさされる。
 ④ 数年後に予想される消費税率の改定:消費税率の改正は時間の問題である。仮に消費税が3%上昇した場合、3千万円を借り入れると90万円の負担増になる。これだけ負担が増えると住宅購入に躊躇(ちゅうちょ)してしまう。
 ⑤ 消費マインドの冷え込み:リストラされるかもしれないという懸念を抱えていては、住宅を購入しようという気は起こらない。

 上記5点の理由が複合的に作用して新築住宅着工戸数は減少していく。21年度は100万戸を下回る可能性が強い。いやそれだけではなく、100万戸を上回る時代は二度と到来しないかもしれない。早急にそれに備えた準備をするべきであろう。具体的にはリフォームへの取組強化である。