2009年ハイムテキスタイル展
不況下で開催された世界最大のインテリア展示会09年ハイムテキスタイル展は色々な面で注目された。出展者とビジターはどの程度減るのか。どのような商品が登場するのか等々。結果は、心配が杞憂であったことを証明。今回も大いに盛り上がった。
■不況下にも拘らず熱気ムンムン
39回目を迎えたハイムテキスタイル展(※以下ハイムと略)がフランクフルト国際見本市会場(写真1)を舞台に開催された。今年のハイムを取巻く経済情勢は厳しい。それは昨年秋の米国サブプライムローン破綻が引金となった世界的な証券会社のリーマンブラザーズの倒産が典型的に象徴している。この状況下で開催されるハイムはどのような展示会になるのだろうか?
期待と不安が交錯する複雑な気持ちで正面ゲートを潜った。だが心配は杞憂、確かに前年に比べビジターは減少、出展者も減ったことも事実だが、それを補って余りある熱気が会場内に充満していた。要因としては不景気ゆえに豪華な旅行や高級乗用車などの大型商品購入を差し控え、その浮いたお金で住空間を充実指せ、家族生活をエンジョイしようという欧州人特有の価値観が根底にあるようだ。したがって景気が落込んでいる割には商談が活発だったようである。当然、円高メリットを活かした仕入を目指す日本のインテリア専門店関係者も多かった。では早速リポートに入るが、前半はトレンド報告、後半は主だった出展企業のブース紹介である。
■日本人として初の快挙
まず報告したいのは新トレンドを検討する「トレンド円卓会議」のメンバーにDANプロジェクトの南村弾氏が日本人として初めて選ばれたことである。ハイムのトレンド円卓会議は権威があることで有名、実際、メンバーはロンドンに本拠を置き3000名のトレンドウオッチャーを擁する「ザ・フューチャー・ラボラトリー」や、イタリアのコモに本拠を置く「アレヴィジ・エ・アレヴィジ」、ドイツの著名なトレンドセッターである「ボラ・ヘルケ・シュティルビューロ」。世界最古で業界内でも5指に入る実力派事務所の「カルラン・インターナショナル」、今回のトレンドブックを責任編集したオランダの「スティールインスティトゥート・アムステルダム」という実力派が揃っている。それだけに日本インテリア業界の快挙と表現しても過言ではない。
■思いがけない驚きを発見する!
さてトレンドのスローガンは、「Expect the unexpected!(思いがけない驚きを発見する!)」(写真2)。

これを平たく訳すと「一歩踏み出そう、想定外のサプライズを発見するに違いない」という意味。まさしく現代の予測不可能な時代に相応しいスローガンと言えよう。このスローガンの下に六つのテーマ(写真3)が設定されている。正確を期す意味でトレンドブックから抜粋する。

イリュージョニスト(ILLUSIONIST)
パッド/レイヤー/フォールド分野のハイテクノロジーが織りなすイリュージョン。
巨大な塊からは想像できない軽さに仕上げられている。童心に帰って美麗なドレープの後ろでかくれんぼ。ミルフィーユのようなレイヤーや綿密な折りたたみ構造が魅了する。(写真4)
タイムトラベラー(TIME TRAVELLER)
時空を超えた旅ができたら・・・。タイムトラベルとは、魔法のチェストを開ける旅。
神秘的な魅力の中世、アールヌーボーやアールデコに代表される美の探求など、どの時代にもドラマと究極の美がある。
(写真5)
フォーチュンテラー(FORTUNE TELLER)
あらゆる文化がぶつかり、混ざり、昨日が明日を生み出す。放浪や流浪。今こそ自由な精神を取り戻そう。
エコやエスニックなど新たなトレンドが、既存のルールを打ち破る。(写真6)
アルケミスト(ALCHEMIST)
錬金術師たちは練金には成功しなかったが、彼らの叡智は既成概念に新たな光を当てることになった。
線と面の巧みな構成があらゆる角度に光を反射する。それは光線と物体のインタープレイ。
シュールリアリスティックな形状に新たな魅力が追加される。(写真7)
ウィッチクラフト(WITCHCRAFT)
神秘的な毛皮や羽毛をまとう森の住人たち。
その姿に魅了されたアルティザンは、実在と空想とを問わず、生き物の持つ美観を再現しようとする。
未来永劫続くエコシステムを築いたものとは一体何だろう?(写真8)
エンチャンテッド(ENCHANTED)
煌びやかなファンタジーを描くアーティストのスケッチブック。その一つ一つを切り取り、新たな構成を創造する。
色彩と戯れ、絵筆を振るい、自由な精神を爆発させる。どんな世界が待っているのだろう。
狂気か、あるいはアナーキーか。かつて見たこともない究極の美が、そこに隠されているかもしれない。(写真9)
■限りなくファッションに接近
デザイナーの文章は解説というより「詩」のようだ。したがって前述の引用文から具体的イメージを脳裏に思い浮かべるのは難解。そこで独断と偏見で解釈すると「インテリアが限りなくファッションに接近」と表現できる。これは各社のブースに置かれたテキスタイルを衣装とした数多くのマネキン人形(写真10,11)が如実に証明している。インテリアと較べアパレルは多種多様である。繊維、織り方・編み方、色柄、縫製、アクセサリー・・・等々。
だが何といっても最大の違いはインテリアが平面的であるのに対してアパレルは立体的なこと。
今回、トレンドフォーラムに展示された生地見本や各社ブースの展示品を見た限り、インテリアがファッションに近づこうとする意志と姿勢が見受けられた。この傾向は昨年のハイムで提案された、立体構造を意味する「ストラクチュア」というキーワードの当然の帰結でもある。そしてファッション化を支えたのが技術革新である。紡績撚糸技術はもちろんのこと、クリスタルを接合する高周波技術、複雑な刺繍を簡単に仕上るミシン、レザーカット、デジタル印刷、転写プリント、エンボス技術等々である。これらの技術革新が「コラボレーション」「ハイブリッド」「異素材ミックス」を可能にし、企画担当者やデザイナーに自由大胆なデザインを発想させたのである。

■ブラック・グリーン・パープル
カラーの点では引続き黒が基調となっている。それにアクセントとしてのパープル(写真12)も数多く見受けられた。
昨年も傾向としてはあったが一気に顕在化したのがグリーン(写真13)である。
この背景としては環境問題が大きい。環境問題のシンボルカラーはグリーン。だとすればグリーンは今後も拡大する一方と思われる。実際、欧州で著名なラッシュ社のデザイン担当役員ホルツアプフェル氏(写真14)は自信満々で「グリーンは新しい黒になる」と述べていた。
さて環境問題と来ればブラウンに代表されるアースカラー(写真15)も見落とせない。そして太陽の色レッド(写真16)も随所に見られたが、いずれも原色ではなく、渋く落着いた色が多かった。

また「ストラクチュア」(写真17)と並ぶ昨年のもう一つのキーワード「メタリック」(写真18)も増えている。但し昨年はギンギンキラキラしたものが主流であったが、今年は派手な感じではなく、ちょっと押さえた上品な印象のものが多かった。

さてパターンであるが、アフリカやジャングルを連想させる柄(写真19)、森林を守れということで植物柄(写真20)が目立った。
但し柄に関してはカラーほど偏りがなく、トレンドと呼べるものは植物柄以外には目につかなかった。
これらの傾向は一過性なのか、それとも継続するのか今後も注視していきたい。
■ニアノルデスカ・Teba・ラッシュ
ハイムテキスタイル展(以下ハイムと略)は世界最大のトータルインテリアの展示会である。しかし近年、発展途上国からの出展が増え、盗撮などに嫌気がさした「エディター」と呼ばれる高級テキスタイルメーカーが大挙してメゾン・エ・オブジェへ移ってしまった。
その状況下、ドイツの名門ニアノルデスカ社はハイムに踏み止まり高級織物の魅力を存分にPRしていた。開催国ドイツは世界屈指のテキスタイル大国。
エディター市場としても世界最大である。メゾン・エ・オブジェは運営面で多くの問題を抱えているようだ。エディターがハイムへ戻るのは時間の問題かもしれない。
さてブラインドで著名なTeba社(写真21)は広いブースに各種ブラインド類を展示。
中でもレーザーカットやデジタルプリントなどの最新技術を駆使した商品は人気であった。また熱エネルギーを25%節約するというハニカム構造のスクリーンをハイムに合わせて発表。ドイツの一般紙で紹介されただけでなく、ハイムと平行して開催された建築インテリア誌のコンテストで大賞を獲得。 同じくクリエーションバウマン社も断熱性を数値表示したカーテンが受賞した。このようにエコ時代を反映して省エネをアピールした商品が目立ったのも今年の特徴である。また、会場内はグリーンが目立ち、誰もがエコ到来を感じたようである。
■日本企業も高い評価
今回、31社の日本企業が出展した。
常連のNeedK(写真22)の充実ぶりは目覚ましい。
それを象徴するのが同社専属デザイナー南村弾氏のハイムトレンドセッターへの抜擢である。
当然、展示商品が好評であった事は言うまでもない。 |
さて初出展の黒沢レース(写真23)は商品名『ラインビュー』という紐状の「ストリングスカーテン」が好評を博した。
手で捺染印刷した模様が表裏ともでパターンになっているのが特徴である。
この種のカーテンは欧州の若い女性に人気だけに評判を呼ぶに違いない。 |
評判という点では2年連続出展のニチベイトレーディング(写真24)も負けてはいない。
ハイムの雰囲気にすっかり慣れ、商談を活発に進めていた。 |
また日本の壁紙メーカーとしてハイム初出展のスリーエイ化学(写真25)も反射エンボスと呼ばれる高級感に富んだ壁紙が好評であった。
|
出展各社はどこも健闘、ジャパンブランドの高い評価を認識させられた次第である。
最後に一言。日本のインテリア市場は閉塞状態、それだけにハイムを舞台に海外へ飛躍することを提言したい。
|