日装連WEB最近の話題−4 ①

Ⅳ ペット共生のインテリア

 
Ⅳ-1 少子高齢化の進展とペット共生
  今、ペット共生のインテリア(※以下ペットインテリアと略)に注目が集っている。専用の雑誌も発売され好評のようである。何故なのだろうか。それを考察する前に、まず「急がば回れ」で社会的背景から入ることにしよう。
周知のように日本の人口は、2006年の1億2770万人をピークに減少を開始した。早急に産休や育児休暇、育児手当等の制度を拡充しなければ5年毎に200万人ずつ日本の人口が減少するというショッキングな指摘が国立社会保障・人口問題研究所から発表されている。典型的な少子高齢化社会の到来である。それも進展の速度が世界史上でも類を見ないスピードで進んでいるという。たとえば65歳以上の高齢者が占める割合は1990年が12%、2000年が17%、2006年が21%という具合に高まっている。このような急速な進展にもかかわらず、対策は大幅に遅れている。早急に対応策を確立しなければならない。
 さて少子高齢化の進展で発生する問題は、単に労働力人口が減少することによる経済活動の停滞や衰退だけではない。老齢化と核家族化の進展により社会や家庭内の雰囲気も暗く殺伐になりがちである。話し相手がいない孤独なお年寄の増加、あるいは遊び相手がいないため余暇の大半をテレビゲームに熱中する子供達の増大により人間的な潤いの少ない無味乾燥な社会が到来するかもしれない。この問題をマスコミは連日のように報じ、専門家は政府や自治体による有効な具体策の早期実施を提言している。
 そのような世相を背景に犬や猫などのペットが持つ癒し効果に注目が集っている。実際、精神医学の専門家もペットとの共同生活、すなわち「ペット共生」が精神的な癒しに効果があり、潤いのある生活が確保できる事を異口同音に指摘している。また最近はペットと一緒に生活する老人ホームも増えているが、痴呆対策を含め効果が確認されている。
 
Ⅳ-2  ペットとしての犬と猫
  さてペットの種類は数限りなく多い。たとえば哺乳類でも犬や猫以外にもサルやウサギ、ハムスター、リスなどもいる。またインコや九官鳥などの小鳥類もいる。さらにカメやヘビなどの爬虫類をペットとして飼っている人もいる。それ以外にもカエルやイモリなどの両生類、金魚や熱帯魚などの魚類、カブトムシやクワガタなどの昆虫類、クモやサソリなどのクモガタ類、ムカデなどの多足類という具合に多種多様である。
このようにペットの種類は多いが、マンションなどでは禁止のルールがあっても熱帯魚などの魚類やインコなどの鳥類は人間に対する危険性もなく、近隣とのトラブルも殆ど発生しないため黙認されているケースが多い。対照的に脱走した場合、人間に危険が伴うようなサルやヘビ、オオトカゲなどは始めから問題外である。このように対象とするペット類を消去法で絞り込んで行く、残るのは哺乳類の犬と猫である。
犬と猫は数も圧倒的に多い。国内には約1200万匹の犬と900万匹の猫が住んでいると推定されている。数だけでなく問題点も多い。具体的には、犬の「噛む」「マーキング」などの習性、猫の「爪砥ぎ」「スプレー」という習性、犬と猫に共通する「抜け毛」「爪で傷つく」という問題である。これらは建具や内装材に損傷を与え、汚れの原因にもなるだけに要注意と警戒されても致し方ない。したがって「ペット共生のインテリア」を考察するに当たっては、対象となるペットを犬と猫に限定しても差し支えないと思われる。
Ⅳ-3 犬猫と人間の歴史
  さて犬と猫は有史以前から人間と一緒に生活してきた。特に犬の場合は狩猟する際の戦力になると同時に住居や倉庫などの番犬としても大いに役に立つ。人間の歴史は遡るほど治安が悪くなる傾向があるそうだが、その点、犬は僅かな物音や臭いで侵入者を発見して吠えて知らせてくれるだけに貴重な存在であった。またハッキリした主従関係を好む習性があるため飼いやすく、昔から共同体の構成員とし扱われてきた経緯がある。
一方、猫の場合は犬ほど古くはないが、やはり長期間に亘って人間と一緒に生活してきた。歴史学は農業の始まりを1万年前と推定しているが、おそらく、その直後から人間と一緒に生活するようになったと思われる。弥生時代を代表する静岡県の登呂遺跡でも大事な穀物をネズミから守るための工夫、たとえば「ネズミ返し」が確認されている。密閉した倉庫がなかった時代、収穫した穀物を如何にしてネズミの害から守るかは大きな課題であった。
猫は食肉性のため米などの穀物は食べない。もっぱら倉庫で保管の穀物を食べにくるネズミを退治して餌にするだけだ。この理由から人間は猫を役に立つ動物として接してきた。実際、世界各地に点在する古代文明の遺跡からも猫の骨などが出土、人間と一緒に生活していた痕跡がうかがえる。また古代エジプトでは猫を神格化して壁画に描いただけでなく、猫をミイラにして丁重に葬っている。余談だが帆船の時代に船乗りが猫を航海に連れて行ったのはこの理由によるところが大きい。もちろん可愛いためペットとしての役割も大きいが。
このように犬と猫は古来より人間と一緒に生活してきた。そのため人間の側からすると習性や行動パターン、病気などに関してもある程度の知識と情報を把握している。よく知っているだけに安心感も大きく、仲間として一緒に生活したいという「コンパニオン・アニマル」の発想が生まれてくる。
 
Ⅳ-4 アンケート結果の問題点
  有史以来、一緒に生活して来たことは事実である。しかし正確に表現するなら人間と犬猫は一定の間隔を保ちながら生活してきたと言うべきである。換言すると人間は屋内、犬猫は屋外の生活を基本としている。現在のように屋内で一緒に生活するようになったのは、人類の長い歴史から見れば極めて最近のことである。中高年の人は思い浮かべて頂きたい。ちょっと前まで猫にはネズミ退治、犬には泥棒対策の番犬という役目を課していた。そのため屋内に比較的自由に出入りできた猫は別として、犬は屋外で鎖に繋いで飼うのが一般的であった。このように犬と猫は長い間、屋外の生活を基本として生きてきた。それが「コンパニオン・アニマル」などと煽てられて屋内で一緒に生活するように強いられた。当然、犬や猫の立場からすると、人間の都合で勝手に決めたで生活ルールを押し付けられても対応する術がない。やはり飼主が犬猫にも最大限配慮するべきである。ここから「ペット共生のインテリア」の必要性が生まれる。
さてINAX㈱ が実施したWebモニター調査によると、家族がペットを飼うことを嫌がる理由は次の順位である。
①50.9%:ニオイがするから 
②47.3%:抜け毛が散らかるから
③38.2%:室内が傷つくから
④36.4%:室内が汚れるから
⑤32.7%:うるさいから
⑥21.8%:不潔だから
⑦ 7.3%:汚いから

INAX㈱の調査はペット全体を対象としている。しかしペットといっても種類が多いうえに、犬と猫でも微妙に違うはずである。その点、東リ㈱のカタログ『犬家猫館(イヌヤ、ネコタチ)』には、床材に限定しているが、犬と猫別のアンケート調査「犬と猫にまつわる一番の悩み」が掲載されている。参考になるので転載する。

床にまつわる一番の悩み
 
順位 悩みの内容 全体
1位 爪で床に傷がつく 52% 42% 62%
2位 抜け毛の掃除がしにくい 52% 52% 52%
3位 食べこぼし、粗相の汚れ 38% 45% 31%
4位 ペットが滑って危ない 33% 55% 10%
5位 ペットの走り回る音 29% 36% 21%

東リ・カタログ『犬家猫館(イヌヤ、ネコタチ)』から転載

このアンケート結果は非常に興味深い。悩みの第1位は、犬は「ペットが滑って危ない」、猫は「爪で床に傷がつく」となっている。また犬の場合は「ペットが滑って危ない」と「抜け毛の掃除がしにくい」が50%を超え、その他の項目でも悩みが比較的高いことが分かる。その点、猫は「爪で床に傷がつく」と「抜け毛の掃除がしにくい」が50%を越えているものの他の項目の悩みは比較的低い。「ペットが滑って危ない」にいたっては10%である。という事は、猫と較べて犬と一緒の生活の方が問題点は多いようである。
ここでINAX㈱と東リ㈱の両アンケート資料、およびインテリア文化研究所が昨年実施したヒヤリング調査を参考にしてペットインテリアの問題点を犬猫別に列記してみる。

まず犬の場合である。
①噛むことによる障子や襖などの損傷
②爪による畳やカーペットの損傷
③粗相(排泄)の汚れ
④抜け毛が散乱することによる汚れ
⑤ペット臭

次に猫の場合を記す。
①爪とぎによる壁や家具の破損
②嘔吐による汚れ
③抜け毛が散乱することによる汚れ
④粗相(排泄)の汚れ
⑤ペット臭(※問題点としては極めて低い)

 
Ⅳ-5 犬と猫の相違点と共通点
  犬と猫には共通点と相違点がある。まず根本的に異なる点は種類数と体格差であろう。まず猫から説明するが、国内で飼われているのは雑種が圧倒的に多く、純血種の種類も犬と較べればはるかに少ない。また体格も殆どの猫が2.5~7.5キロの範囲に収まっている。性格もキツイ・オットリという差は若干あるものの、犬と較べれば差が殆どないと断定しても誤りではない。
一方、犬の場合、番犬としての役割が強かった昭和50年~60年頃までは雑種が圧倒的に多かった。しかし生活にゆとりが生まれ、番犬からペットとしての役割が強まるに比例して純血種が大幅に増加、それに反比例して雑種犬の数が大幅に減っている。背景には経済的ゆとりの他に見栄と虚栄心が多分にあるようだ。この傾向はさらにエスカレートして最近では小型犬に衣服を着させるケースも増えている。人間の子供と同じ扱いだが、欧米では殆ど見かけない光景だけに特殊日本的ナ現象と言えるだろう。
犬の種類は猫と較べて断然多い。それだけに体格も体重2キロ前後で超小型のチワワから、体重70キロ近い超大型のニューファンドランドまで種々いる。もちろん身長も体高20センチのミニチュアダックスから、80センチのアイリッシュウルフハウンドまで様々である。当然、種類が多く体格差も大きいだけに気性や気質も異なるが、これを掘り下げていくとキリがないので詳細は割愛する。なお大型犬を室内で飼う場合、畳は避けた方がよい。犬の爪が引っ掛かるうえ、畳の強度が弱いので短期間のうちにボロボロになってしまう。
さて次に犬と猫が異なる点は活動範囲である。犬の場合は平面を動き回るのが基本で、机やタンスによじ登ることはまず考えられない。対照的に猫は平面的に駆け回ることは少ないが、机やタンスなどの高い場所に登る立体的な動きは好む。換言すると犬は二次元的ペット、猫は三次元的ペットと表現することもできる。したがって平面的に動き回る犬を屋内で飼う場合はある程度の広さが必要である。さもないと運動不足に陥ってしまう。またパソコンなどの精密機器があり犬や猫を入られたくない場合、犬は体格に応じた柵を設ければ大丈夫だか、猫は立体的に動くため天井から床までを仕切らなければ進入防止策にはならない。
このように考察を進めれば数限りない。しかし今回は犬や猫の種類や体格、性質を論ずるのが目的ではなく、あくまでも「ペット共生のインテリア」である。したがって犬や猫の種類や体格差には目をつぶって最大公約数的に検討を進めたい。
ペットインテリアのテーマから外れるが、悩みの多い「うるさい」について触れたい。おそらく犬が室内で吠えることを指していると思われる。だとすれば「吠える」という犬の習性は殆どが躾(しつけ)で対応可能である。この点は強調しておきたい。当事者からすると「うるさい」や「騒々しい」は深刻な問題には違いないが、少なくとも建具や壁紙、畳やカーペットなどへの損傷という点では関係ないので今回はこの辺で留めておく。ここから先はペットインテリアの観点、すなわち「建物の損傷防止」「室内の汚れ防止」という観点から考察を進めたい。
さて建物に損傷を与えるという点では、犬の場合は咬む行為、猫の場合は爪とぎという具合に大きく異なる。
子犬の場合、歯が抜け替わる生後4~6ヶ月ぐらいは「むず痒い」ため何にでも咬む傾向がある。しかし咬む行為には歯茎(はぐき)や顎を鍛え、脳を活性化し、歯石を取るという一石三鳥の効果もある。そのため一概に禁止するのではなく、咬んでもよいものとダメなものを教えるというや躾(しつけ)が基本である。それでも家具などを咬むようであるなら咬み応えのある十分なものが与えられていないサインなので、他の咬み応えあるものを捜してあげよう。当然、それまでは家具などをプロテクトしなければならない。
 一方、猫の爪とぎには、獲物を獲る為のメンテナンスやストレス解消、テリトリーのマーキングという役割がある。猫の生存には必要な行為のうえ、本能としてDNAに刻まれているので禁止するのではなく市販の爪とぎグッズなどを与えて解決を図るべきである。これを怠るとビニル壁紙や家具の塩ビレザーなどは猫にとっては適度な凹凸があり、適当に硬いため恰好の爪とぎ場所で、短期間のうちにボロボロにされてしまう。ここで腰壁や表面強化壁紙の出番となる。
次に粗相(そそう)による汚れだが、猫の場合は猫用トイレの砂に臭いを付けてあげれば、たとえ子猫であってもそこで排泄をするようになる。最近の猫用トイレ砂はデオドラント効果が高く、臭いは殆ど気にならない。ただしトイレが小さいと放尿する際に外に漏れて臭いの原因にはなる。また自分のテリトリー(自宅庭)に違う猫が出没したりすると、ストレスからトイレ外で排泄をする場合もあるがこれは例外であろう。
猫は清潔好きのペットである。自分の身体を舐めてきれいにするグルーミングという習性があるため、室内で生活している猫のペット臭は強くはない。しかし舐めた際に自分の毛を飲み込んでしまう。溜まれば当然吐き出す。これは生理的現象なので止むを得ない。ペットショップなどで「ネコ草」と称するイネ科植物を販売しているが、これには胸焼けを防ぐ役割と同時に嘔吐を促進させる効果がある。嘔吐は排泄とは違って場所を選ばないので、カーペットなどは簡単に剥がせて洗浄できるタイプが適している。タイルCPの出番である。
さて小型犬には室内でトイレをするケースもある。また躾(しつけ)をしたとしても室内でマーキングする場合もある。可愛いとはいっても、やはり臭いは気になる。トイレシーツも最近はデオドラント効果に考慮しているが、対応策の基本はやはりクリーニングである。クリーニングと消臭壁紙や消臭カーテンを上手に組み合せて対応したいものである。
 
Ⅳ-6 ペットインテリア選択は適材適所
   ペット共生のインテリアに絶対的なものは存在しない。おそらく日進月歩で技術が進んだとしても、絶対的なものは登場しないだろう。したがって個体差などの条件や室内環境を考慮して「適材適所」という観点からインテリア商材を選択しなければならない。
これまでは、もっぱら人間サイドの立場から考察を進めてきたが、ペット側の視点、すなわちペットをケアするという観点からの対応が重要なことは言うまでもない。たとえば床材であるが、傷つきを考慮すればセラミックタイルのような表面強度に優れた硬質床材が適している。しかしセラミックタイルの雰囲気が日本家屋に適しているかという問題と供に、室内を走り回る犬の安全性や健康にも最大限配慮しなければならない。平滑すぎても犬が滑って危険である。硬すぎても関節を痛めやすい。特に体重がある大型犬の場合は顕著で適度なクッション性が必要である。クッション性といえばカーペットを連想するが、カーペット以外にも犬猫を念頭に置いて商品開発した専用シート床材が発売されているので多角的に検討していただきたい。
さて「傷がつきにくい」「臭いが移染しにくい」「汚れにくい」「汚れが除去しやすい」、これらの機能性を総称して「ペット対応性」と呼ぶことにする。これらの機能性も極めて重要である。
とかくペットを愛する人達の中には自分の生活と住居を犠牲にして「命、ペット!」的な人もいる。いやむしろ多いかもしれない。気持としては理解できるが、率直に言うなら「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」である。やはりペットインテリアを選ぶには全体的視点から検討するべきであろう。全体的視点とは、「部屋の目的と用途」「ペットの安全と健康」「ペット対応性」の3つである。
 カーペットや床材だけでなく、壁面に関しても同様のことが言える。最近、腰壁ブームも一段落した感はあるが、礼賛してやたら周囲に勧める人もいる。たしかに腰壁は傷がつきにくく、部分的な張替えも可能なのでペット対応性に優れている。しかし部屋が和室であった場合は雰囲気的にチグハグになってしまう。この場合は和調の表面強化壁紙を勧めるべきではなかろうか。