日装連WEB最近の話題−4 ②

Ⅳ ペット共生のインテリア②

 
Ⅳ-7 カーペットを選ぶ際の留意点
   ペットインテリアを解説したカタログやマニュアル類が数多く出回っている。しかしインテリア商材の基礎を理解しないまま書いてあるケースが多く、その殆どが「解説書」と呼ぶに値しない一面的かつ断片的な説明に終始している。これでは一般ユーザーを納得させることも不可能だし、ペットにとっても不幸である。したがって、ここから先はプロが理解しておくべきカーペットの基本問題を取上げたい。
ペットインテリアのジャンルの中で「いの一番」にカーペットを選んだ理由は、カーペットがペットインテリアの中心的存在として今後ますます重要になるだろうと判断したためである。
 タイルカーペットとロールカーペット
 カーペットを形状で区分するとタイルカーペット(※以下タイルCPと略)とロールカーペット(※以下ロールCPと略)に大別できる。日本の場合、昭和50年頃までは殆どがロールCPで、タイルCPは僅かにヒューガ社の輸入品だけであった。しかしオフィスのアメニティー化とIT化に伴いタイルCPが急増してロールCPを逆転しただけでなく年々差を広げている。余談だかタイルCPの比率がこのように突出している国は世界中を見渡しても他に存在しない。特殊日本的な現象だけに注目に値する。
 さてタイルCPとロールCPのどちらがペットインテリアとして適しているのだろうか。答えはハッキリしていて、間違いなくタイルCPに軍配が上がる。理由はメンテナンス性の一言に尽きる。前述したように例え躾(しつけ)をしたとしても粗相(そそう)や嘔吐は不可避である。これらの汚れを除去するには衣服のシミや汚れと同じで早い段階でのクリーニングがもっとも効果的である。ところがロールCPは敷き詰めてあるので簡単に剥がせない。まして日本の家屋は狭く、伝統的に「収納の思想」が貧弱であったため、壁に面した部分が整理タンスや洋服タンスなどの置き場と化している。その結果、ロールCPを取り外すには家具などを移動する必要があり苦労してしまう。だが面倒と思ってクリーニングせずに放置しておくとシミや汚れがカーペットの奥深くまで滲み込んで取れなくなってしまう。
なおクリーニングと表現したが、あくまでも自宅クリーニングである。屋内ならば風呂場、屋外ならテラスやベランダに並べて中性洗剤を使って洗浄。次に洗濯機の脱水機能を使って脱水、その後に風通しの良い場所で乾燥させれば完了である。ただし一言。タイルCPのノウハウはバッキング層にある。当然、クリーニングした場合の寸法安定性や形状復元性は各社各商品によって大きく異なる。お手数でも採用を検討する段階で、クリーニングが可能かどうか、さらにはクリーニングの方法と寸法安定性能などの物性に関しての確認が必要である。
 タイルCPの利点はそれ以外にもある。汚れは粗相(そそう)や嘔吐だけでなく、人間やペットが歩く「動線」も汚れが目立ち易い。特に大型犬は散歩後の足裏拭きを怠ると足面積が大きいだけ汚れを促進させてしまう。またペットも人間と同じで安心して寛げる好みの場所がおのずと決まる。そのお気に入りの場所で座ったり横になったりして長時間を過ごすが、そのような場所も汚れが目立つ。タイルCPであるなら簡単に剥がせるうえ、自宅でのクリーニングも容易なので便利である。タイルCPはメンテナンス性に優れていることを強調しておきたい。
 再度確認するが、タイルCPは人気商品だけに各社からたくさんの種類が販売されている。種類や価格帯も豊富で、当然のこととして物性や機能性も千差万別である。性能などを十分に確認してから購入していただきたい。
カーペットの繊維素材
タイルCPがペットインテリアのカーペットとして適していることは理解していただけたと思う。ではタイルCPであれば、どの繊維素材でも物性に大差ないのだろうか。答えは否である。同じ会社のタイルCPであっても使用する繊維素材によって物性は大きく異なる。なぜならウールやナイロン、ポリプロピレンなどの繊維間の物性差が大きいからである。また一口に「物性」と言っても様々な物性があるだけに、求められる物性が何かを把握しなければならない。
さてペットインテリアを考える場合、もっとも重要な繊維の物性は耐久性である。では耐久性とは何だろうか。耐久性には2つの側面がある。だいぶ以前は「耐摩擦強度」と「耐へたり強度」という解説をしていた。しかし現在は「耐動的荷重性」と「耐静的荷重性」に変わっている。カーペットだけであるなら以前の表現の方が分かりやすかったが、耐久性のテストはカーペットだけでなく塩ビタイルや塩ビシートなどの硬質床材にも適用される。そのため一般には通用しないカーペット業界用語の「へたり」という表現を使うわけにはいかなかった事情がある。
耐動的荷重性は、名前のとおり動きのある荷重にどこまで耐えられるかという性能で、具体的には家具を引きずることによるダメージ、キャスター(車輪)付の椅子を前後左右に移動させることによるダメージ、靴を履いて歩行することによるダメージ等を想定した試験法である。カーペットの場合は繊維素材が大きく影響する。
それに対し耐静的荷重性は、家具などの重量物を長期間置いた場合の床材やカーペットが耐えられる性能である。日常生活で経験する家具を移動させた場合のカーペットや畳の家具跡がこれである。この耐静的荷重性試験は、カーペットパイルの潰れ具合を判断するのに適している。
耐静的荷重性は繊維素材の種類も影響するが、それ以上に影響するのが「目付量」「パイル密度」「パイル形態」「パイル長」である。これらも重要な要素なので別の項目で説明したい。
ではカーペットに使われる6種の繊維の耐動的荷重性と耐静的荷重性を強い方から弱い方へ順番に並べてみよう。再三指摘するように耐静的荷重性は繊維素材よりもその他の要素が大きく影響するので、あくまでも参考程度に留めて頂きたい。

〔耐動的荷重性〕
ナイロン > ウール> ポリプロピレン> ポリエステル > アクリル> レーヨン

〔耐静的荷重性〕
ナイロン > ウール> ポリエステル > アクリル > ポリプロピレン> レーヨン

 この順番からも分かるとおり動的と静的の荷重性能でもっとも優れているのはナイロン、逆にもっとも弱いのはレーヨンである。元気の良い大型犬と一緒に屋内で生活している場合、耐久性が最優先課題になるので「ナイロン」が適している。一方、インテリア繊維として隆盛を誇っていたレーヨンが凋落する一方なのは、やはり耐久性に劣るという理由が大きい。
 フィラメント糸とスパン糸
 繊維にはフィラメントとステープルの2種類がある。前者を長繊維、後者を短繊維と呼ぶ。もっとも1本の繊維ではカーペットを作れないので多数の繊維を引き揃えて糸にする。
フィラメント(長繊維)を引き揃え糸にしたものをフィラメント糸、ステープル(短繊維)を紡績して糸にしたものをスパン糸(紡績糸)と呼んでいる。ナフサを原料とする合成繊維はドロドロした繊維原液をノズルで溶融紡糸して繊維にするのでフィラメントとステープルの両方が可能である。しかし天然繊維の場合は絹を例外としてステープル(短繊維)しか存在しない。毛の長さが数百メートルという羊は存在せず、綿花も同様だけに当然と言えば当然である。
 フィラメント糸とスパン糸には一長一短がある。前者は繊維が連続しているので「抜け毛」「遊び毛」や「ファズ」「ピリング(毛玉)」が生じない。しかし反面、ボリューム感には欠けるため部屋の雰囲気を豪華に演出するのには不向きである。対照的にスパン糸はステープル(短繊維)を撚って糸にしているため「抜け毛」「遊び毛」や「ファズ」「ピリング(毛玉)」は発生してしまうが、紡績糸なのでボリューム感に富み、リッチな雰囲気の演出には適している。ただしフィラメント糸であっても目付量を増やせばボリューム感は得られる。逆に紡績糸であっても目付量が少なければ貧弱な雰囲気にしかならない。あくまでもトータルで考えていただきたい。
 「抜け毛」「遊び毛」や「ファズ」「ピリング(毛玉)」の発生、および繊維屑が埃と一緒に室内を漂う浮遊粉塵の問題を考慮するとペットインテリアの繊維素材としてはフィラメント糸に軍配が上がる。という事は現時点の結論としてナイロンフィラメント糸ということになる。この点に関して補足すると、現在はボリュームを追及したBCF(Bulked Continuous Filament)ナイロンと呼ぶ捲縮(けんしゅく)加工を施したナイロン糸も登場している。しかしカーペットの奥行は深い、たとえBCFナイロンを使ったとしても打ち込み密度やパイル形状などによって影響されるため絶対ではない。トータル的な検討が必要である。
 パイルの形態
 カーペットをテクスチャー(表面形状)で分類すると、パイル(毛足)が有るか、無いかで大別される。パイルの有るカーペットの代表がタフテッドカーペット(※以下タフトCPと略)、無いカーペットの代表がニードルパンチカーペット(※以下フェルトCPと略)である。ニードルパンチカーペットとは名前のとおり、原綿をニードル(針)でパンチ(刺す)してフェルト状にしたカーペットの総称である。
昭和40年代前半、「第3の床材」を謳い文句にフェルトCPが登場したばかりの頃はカーペットまだ贅沢品で、またフェルトCPに対する物珍しさも手伝って業務用途ではボーリング場、住宅ではダイニングキッチンに盛んに採用された。しかしパイルが無いため装飾感に欠ける傾向は否めず、さらに汚れが目立ちやすい欠点もあり、40年代半ばから登場するBCFナイロンを使った「コントラクトCP」に急速に取って替わられた。インテリア用途に限定した場合、現在ではイベント会場に使われるだけではないだろうか。ちなみに雑学の類で恐縮だが、「契約」を意味する英語「Contract」の名前を冠した業務用カーペットは、施工に際して契約書を取り交わすことからこの名前がついている。
  話を本題に戻そう。パイルの形状には「ループ」と「カット」の2種類がある。もっとも最近は嗜好の多様化とタフトマシン(織機)の高性能化に伴いパイル形状も多様化している。たとえばループ部分とカット部分が高低差のある「ハイカット・ローループ」、ループとカットのパイル長が同じ高さの「レベルカット&ループ」、あるいはループ同士で高低差をつけた「ハイ&ローループ」という具合である。しかし基本がループとカットであることに変わりはない。
 この2種類のパイル形状であるが、耐久性という点ではループが勝っている。比喩としては適当でないかもしれないが、片足よりも両足で立つ方が安定していることと同じ理屈である。
 なおパイル形状と供にパイル長も耐久性に影響を及ぼす。当然、耐久性という点ではパイル長が高いよりも低い方がベターである。ただしパイル長を低くするとクッション性や床衝撃音に影響を及ぼしてしまう。したがってパイル長を低くする場合は、バッキング層を厚くする配慮が必要である。カーペットを選ぶ際には全厚で判断して頂きたい。
 打ち込み密度
 タフトCPのルーツは19世紀末にキャサリン・エバンスという米国の少女が作ったベッド・スフレッドである。彼女は手作業で綿基布に刺繍をしたが、これがタフテッド・マシンへと発展して行く。当然、この機械の発明も米国であった。そのため単位はインチ(2.54センチ)を使用する。
 打ち込み密度とはパイル密度を指すが、単位は1インチ平方に何本のパイルを打ち込むかで表す。たとえば規格表に打ち込み密度が「1/10ゲージ、9ステッチ」と表示されている場合は、カーペットの巾方向1インチ当たりに10本の打ち込みがあり、縦方向は1インチ当たり9本を意味している。換言するとパイル密度は1平方インチ当たり90本になる。耐久性という点では打ち込み密度が密になるほど性能が高まる。
 
Ⅳ-8 カーペット耐久性のまとめ
   カーペットを多角的に考察してきたが、耐久性を重視して選択する場合は、下記のマトリックスが参考になる。ただし一般的なカーペットを耐久性で選ぶ場合は正しいが、ペットインテリアという点では1点だけ間違っている箇所がある。それはパイル形態で、ペットインテリアの場合はパイル形態が入れ替わらなければならない。すなわち「カット」が正解である。なぜならループでは犬や猫の爪が引っ掛かってしまうからである。特にナイロン糸は丈夫なので引っ張っても取れず、無理やり外そうとすると爪を傷つけてしまう。したがってパイル形態は絶対にカットを選ぶべきであろう。どうしてもループを選びたい場合は、ループの形状が小さく、打ち込みが密なものを選ぶべきである。くれぐれもビッグループを選ぶべきではない。

耐久性の基準マトリックス

  優れている 劣っている
素   材 ナイロン 他の繊維
繊維の規格 フィラメント糸 スパン糸
パイル形態 ※ループ ※カット
パイル密度 粗い
目 付 量 多い 少ない
パイル長 低い 高い
全   厚  厚い 薄い

※ペットインテリアの場合は、カットを選択すべき。

補足としてカーペットの汚れ防止に簡単に触れたい。カーペットの汚れ防止には次の方法がある。
① 汚れがつきにくい薬剤をカーペット表面に塗布する
② 乱反射の原理で汚れを見えにくくする中空断面糸の採用
③ 断面の太い繊維を使うことにより汚れと接触する表面積を小さくする

①の薬剤塗布の代表が「・・・・ガード加工」と呼ぶフッ素樹脂コーティング法である。初期の段階は効果があることは事実。しかしフッ素樹脂コーティングの短所は摩擦に弱いことで、何時しか効力が薄れてしまう。②の中空断面糸はコントラクトCP用のBCFナイロンに採用されている。中空断面糸も汚れを見えにくくしているだけで、汚れが付着しないわけではない。その意味では決定的な汚れ防止策ではない。③の極太繊維も中空断面糸と同様に決定的な方法ではない。換言すると、犬や猫の粗相(そそう)や嘔吐は重度の汚れのため、フッ素樹脂コーティングや中空断面糸などでは対応できない。やはり「洗浄」というクリーニングが唯一最良の対応策である。
いずれにせよペットインテリアとしてのカーペットはタイルCPを除いて他にはないだろう。その場合のタイルCPは、「BCFナイロン」、パイル形態は「カット」、パイル密度は「密」、目付量は「多く」、パイル長は「低く」、ただし全厚は床衝撃音を考慮して厚くなければならない。人間とペットの共生からもこのようなカーペットを選びたいものである。

Ⅳ-9 壁装材を選択する場合のポイント
  壁装材には様々な種類がある。厳密に分類するとキリがないが、大まかには「貼り壁」と「塗り壁」の二大系統に分類できる。順序が逆になって恐縮だが、後者の塗り壁系の代表は「漆喰」と「じゅらく壁」である。塗り壁は風合いも素晴らしく、吸放湿性を持つ優れた壁装材であるが、高度経済成長期を契機に当時した石膏ボードに代表される乾式工法の登場と普及により殆ど姿を消してしまった。やはり工期短縮というニーズによる湿式工法から乾式工法へ転換には逆らえなかったようである。だが完全に姿を消したわけではない。現在でも一部の数奇屋造には残っている。また最近は環境・健康ブームで吸放湿性が見直されているが、価格も高く、施工職人も少ないため普及は一部に留まっている。したがって今回は割愛したい。
 一方、「貼り壁」はレンガやセラミックタイルなどに象徴される窯業系と壁紙の2大系統がある。たしかに窯業系の壁装材は無機系素材が持つ独特の高級感を醸しだすが、日本の場合は、セラミックタイルなどの無機系建材はキッチンや洗面所、バスルームなどの水周り部分だけに限定して使という暗黙のルールがあるようだ。昔から日本の家屋は「木」と「紙」で造られているという話を聞くが、窯業系の無機質壁装材は高温多湿の風土で生まれた日本のインテリア文化に似合わないようである。
 表面強化壁紙
 日本は類稀な壁紙天国である。平成17年の壁紙生産数量は7億2千万㎡で世界第1位。第2位のドイツ6億5千万㎡に7千万㎡の差をつけている。興味深いことに、一見酷似しているように見えても日独の市場は好対照である。たとえば日本の場合は典型的な国内需要型であるのに対して、ドイツは輸出産業型である。なんと全体の6割をロシアや東欧圏へ輸出している。したがって一人当たりの壁紙消費量という点では、間違いなく日本が世界一である。当然、各種ある壁装材の中でも群を抜いていることは言うまでもない。こうした背景があるだけに、ペットインテリアの壁装材を検討するに際して壁紙に絞り込んでも問題はないだろう。
 さて「ペットの問題点」の項で、①犬の咬む習性と猫の爪とぎ、②犬と猫に共通して汚れる、③臭いが問題点として浮かび上がっている。まず犬の咬む習性と猫の爪とぎ対策だが、あくまでも前提として犬の好奇心の対象となる家具の突起物は極力防護し、犬が咬んでよい物や爪とぎグッズを与えて頂きたい。
 壁紙として推薦したいのは、壁紙ブランドメーカーの団体である「壁装問屋協議会」と壁紙メーカーで組織する「壁紙製品規格協議会」の両者が指定する「表面強化壁紙」である。指定の対象となっている壁紙は、紙、無機質材、プラスチック壁紙の3タイプで、定義は「施工後の表面引っ掻きに強いこと」壁紙メーカーの団体である。表面強化の技術的方法は幾つかあるが、もっとも一般的なのは壁紙の表面に強度に優れたフィルムを。
ラミネートしているフィルムだが、現在流通している「表面強化壁紙」の殆どが、㈱クラレの『エバール』を使用している。『エバール』とはエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂の登録商標で、本来はハムやソーセージ等の食品ラッピングフィルムとして開発された経緯がある。ポリビニルアルコールの特長である耐有機溶剤性とポリエチレンの特長である耐水性を備えているため、壁紙の汚れ防止フィルムとしとて使った場合でも優れた性能を発揮する。食品包装分野では既に20年以上の実績を持ち広く使用されている。その事実が如実に証明するように経口毒性も無害で、燃焼時には有害ガスも発生しない優れものである。価格的にも上代が1メートル当たり1,000円で決して高くはない。お勧めしたい一品である。
 壁紙と腰壁
 住宅の洋風化に伴い10年ほど前から腰壁も使われるようになった。現在、流通している腰壁には、木板を使った本格的な腰壁とインテリア企業が販売している簡易なタイプがある。本格的な腰壁は樹種の種類やモールディングも多種が用意されている。当然、樹種によって引っ掻き傷に対する強度も違うので検討の際は確認が必要である。同時に本格的な腰壁を採用する場合は、往々にしてデコラティブなため凹凸が目立つ。若い犬は好奇心が旺盛なため突起部分を咬んだりする場合があるので、極力、平面的なものを選ぶべきである。
 一方、インテリア企業が発売している腰壁は殆どが簡易なタイプで、本格的腰壁と比べると突起部分が比較的少ない。各社の簡易タイプのカタログを見ると壁紙の技術を応用したものが多く、前述の「表面強化壁紙」のマークなどを表示している。したがってこのマークを参考に選ぶとよいだろう。
 消臭剤を使った消臭壁紙
 室内には不可避的に種々の臭いがこもってしまう。最近はキッチンと食堂、居間が一体化したリビングダイニングキッチンが普及しているだけに尚更であろう。また犬や猫、あるいはペットフードからも臭いが発生する。主成分は尿に含まれるアンモニアや体臭に含まれる腐った玉ネギの臭いのメチメメルカプタン、腐った卵の臭いの硫化水素などである。
 対策としては消臭壁紙をお勧めする。ただし表面強化壁紙と消臭壁紙を兼ねた商品はない。なぜなら表面強化壁紙にラミネートしているフィルムが消臭機能を妨げるからである。そのための対応としては、犬や猫の手足が届きそうな高さまでは表面強化壁紙ないしは腰壁、それ以上の高さの壁面と天井に消臭壁紙という使い分けを提案する。消臭壁紙は面積が大きいほど消臭効果も高まる。したがって表面強化壁紙や腰壁の高さはペットの体格と全体的な部屋のインテリアバランスを考慮して決めるべきである。
 消臭壁紙の多くは消臭効果のある薬剤を練り込むか、表面に塗布している。効力期間は、各社差があるものの大体5年間と言われている。当然、効力を保持するためには5年サイクルでの張替えが必要である。
 光触媒酸化チタンを使った消臭壁紙
最近注目されている消臭技術に光触媒酸化チタンがある。「光触媒」、聞き慣れない言葉である。そのはず光触媒酸化チタンの歴史は比較的新しい。基礎研究が始まったのが今から約30年前で、光触媒を利用した商品が登場したのは10年ほど前からだが紛れもないメイド・イン・ジャパンの技術である。
本来、触媒とは「化学反応の際に自分自身は反応しないが、仲介役となって反応を促進させる物質」を意味している。例えばガラス容器の中に水素と酸素を入れ混ぜ合わせても反応しないが、白金を入れると化学反応を起こして水が生成される。この場合、この白金が触媒の役割を果たしている。自然界にも触媒効果は存在している。光合成における葉緑素がそうだ。光合成とは太陽光により二酸化炭素と水が反応してデンプンと酸素になる反応だが、この二酸化炭素と水の混合体に対してどんなに太陽光を照射しても反応しない。葉緑素が太陽光を吸収することにより初めて光合成が起ってデンプンと酸素が生まれる。葉緑素が触媒の役割を果たしているためだ。
さて光触媒は触媒として半導体を使うが、半導体の殆どは水の中に入れて光を照射すると、陽イオンと陰イオンになって溶解する光溶解反応で溶けてしまう。しかし酸化チタンだけが光溶融を起こさず、おまけに安価で耐久性にも富むため、光触媒の半導体として利用されるようになった。またチタンは地殻に存在する元素の中でも9番目に多く、資源的にも豊富である。
この酸化チタンに波長380ナノメートル(以下nmと略)以下の光を当てると電子が動き電流が生じで光触媒反応が発生する。この反応は3万℃以上の燃焼反応に相当し、強い還元力と酸化力を持つ。この還元力と酸化力によって汚れや臭いの元となっている有機物を分解する。
光触媒反応は通常の燃焼反応とは違い、温度が上昇せず室温の状態で反応が進む。また通常の燃焼反応は、いったん火がつくと物質がなくなるまで反応が続くが、光触媒反応では光が当たる時に光の量しか反応が起こらないという特徴を持っている。さて光触媒の原理がなんとなく理解できたとしても、波長380nm以下の光という意味が分からなければチンプンカンになってしまう。
光というと雨あがりの虹を連想する人が多い。虹ように眼に見えるのは可視光線で、波長は個人差があるものの大体380nm~780nmの範囲内である。
光も電磁波の一種である以上は、空間を波のように波動運動しながら伝わる。当然、波である以上は波長と振幅があり、波長は長い方から短い方へ、電波⇒ マイクロ波⇒ 遠赤外線⇒ 赤外線⇒ 可視光線⇒ 紫外線⇒ X線⇒ ガンマ線という順に分類でき、一般的に光と言う場合は、この中の赤外線と可視光線、紫外線を指す場合が多い。
太陽光全体に占める紫外線の比率は約3%。一方、蛍光灯の場合は紫外線を殆ど含まない。そのため太陽光をフルに受ける場所の建材・内装材は光触媒反応という点で問題はないが、太陽光が十分に届かない屋内で使用する商品は工夫が必要である。企業秘密ということで各社公開していないが、おそらく触媒効果を促進させるような物質を添加しているのではないだろうか、この点に関して確認が必要である。
また留意しなければならないのは、光触媒効果で塩化ビニルなどの有機物質も分解してしまうことである。汚れ物質や臭いの元となっているアンモニアやメチメメルカプタン、硫化水素だけを分解するのではない。ビニルや繊維なども劣化させてしまう。この対策として酸化チタンをゼオライトなどのマイクロカプセルに包んだ「マスクメロン型酸化チタン」や、雲丹(うに)のトゲのような突起物をつくって接触面を少なくした「金平糖型酸化チタン」が考え出された。壁紙の場合は殆どが「マスクメロン型」のようだが、酸化チタンの接触面を少なくしている分だけ触媒効果が劣ることは否めない。したがって大きな期待を寄せると落胆も大きい。せいぜい「加工してない壁紙よりは多少でも増しだろう」程度の気持で採用すべきである。
いずれにせよ光触媒は注目の的である。それだけに光触媒商品には食品添加物として認められている酸化チタンだけでなく、バインダーや分散材として様々な化学物質が使われている。そこで業界として何らかの品質規格と安全性規準を制定する必要に迫られ、業界の自主団体『光触媒製品技術協議会』が発足。品質規格と使用してはならない化学物質一覧等を制定した。選択の際には、このマークを参考にするのも一考である。
 
Ⅳ-10 ペットインテリアとしてのカーテン
   ペットインテリアを考える場合、カーテンも重要である。犬の粗相でカーテンが汚れ、臭いが発散する。クリーニングをしようと思ったらウォッシャブルではない。このような経験は誰もが持たれている。あるいはレースカーテンの編目が粗いので猫がよじ登ってしまう。よじ登るだけでなく、爪が引っ掛かって長時間猫が宙吊りになったという話も聴いている。
 したがってカーテンを選択する際にはクリーニング可能なウォッシャブル・タイプを選んで欲しい。ドレープカーテンは洗うのに躊躇するが、レースカーテンは家庭でも簡単に洗える。クリーニングに勝る対応策はあり得ない。
 レースカーテンは編目の密なものを選んで頂きたい。編目の粗いレースやケースメントなどは猫の恰好なお登り遊戯施設と化してしまう。
 さてカーテンにも消臭カーテンが登場している。ペットインテリアで先行しているT社のカタログから引用すると、「光の力で気になるイヌやネコたちの臭いはもちろん、暮らしの中の悪臭成分を半永久的に分解・除去します」。さらに続けて「シックハウス症候群の要因である、有害なホルムアルデヒドやトルエンなどのVOCも分解する作用があります。人間はもちろん、うちの子も安心して暮らせる住まいづくりをサポートします」と説明している。たしかに間違いではなく、事実であろう。しかし前項の「消臭壁紙」や「光触媒酸化チタン」でも説明したとおり、セラミックタイルやブラインドのアルミハネのような無機質素材は、フルに酸化チタンを使えるが、触媒効果で分解されやすい有機質素材の場合は、マイクロカプセルに包んで意識的に触媒効果の性能を落としている。また紫外線を浴びなければ光触媒効果を発揮できない。換言すると太陽光線の照射が部分的な室内では効果が大幅にダウンすることを承知してお勧めいただきたい。
 
     おわりに
   以上、長々と説明してきた。これも可能な限り平易に説明したかったからである。出回っているペットインテリアのカタログ・マニュアル類は文中に登場する専門用語の説明を割愛しているため分かりづらくなっている。今回は専門用語を極力省き、使かわざるを得ない場合は注釈を加えた。しかし犬や猫を「うちの子」という表現は使っていない。あくまでも冷静かつ客観的に考察したかったからである。この点はご了承頂きたい。
 また流通しているペットインテリアのカーペットや壁紙、カーテン類を厳しい視点から検討した。これも一般ユーザーの信頼と期待に応えるためである。少子高齢化と核家族化の進展、さらには経済的余裕の発生によってペットと一緒に生活する人たちは増える一方と予想される。当然、ペット関連の市場も拡大すると思うが油断大敵で、ちょっとしたミスや詐欺的手法のためコツコツと築き上げてきた成果が台無しという事例を数多く見ている。その極め付けが耐震基準の偽装という激震に見舞われた建築業界である。あるいはインチキ詐欺リフォームで打撃を被ったリフォーム業界も同様である。インテリア業界の発展のためにも品質や性能には常に謙虚で厳しくありたい。これを肝に銘じて「ペット共生のインテリア」の結びとしたい。
 なお執筆に当たって東リ㈱のカタログ『犬家猫館(イヌヤ、ネコタチ)』、およびインテリアビジネスニュース紙に連載中の中田かおり女史執筆の『ペットとインテリア』は大いに参考にさせていただいた。お礼を申し述べたい。